食品の鮮度を長く保つために欠かせない真空包装。しかし、近年ではより進化した技術としてスキンパック包装が注目されています。両者は同じ「空気を抜く」という目的を持つ一方で、その仕組みや仕上がりには大きな違いがあります。この記事では、それぞれの特徴から具体的な違い、さらに他の包装方法までを比較し、最適な包装方法を選ぶためのポイントを解説します。
- スキンパック包装とは?
- スキンパックに使われる素材
- スキンパックの仕組み
- スキンパック包装のメリット・デメリット
- スキンパックと他の包装技術の違い
- スキンパックを使用した環境問題への取り組み
- 企業の事例
- おすすめのスキンパック包装機
- まとめ
- スキンパック包装機を導入するには
真空包装は、食品を専用の袋に入れ、袋内部の空気を抜き取って熱で密閉する、最も一般的な包装方法です。空気中の酸素を排除することで、食品の酸化や微生物の繁殖を防ぎ、鮮度を長持ちさせます。主に調理済み食品、加工肉、乾物など幅広い食品に利用されています。
食品の劣化を抑制し、賞味期限を大幅に延長します。
油脂の酸化や食品の変色を防ぎ、品質を保ちます。
食材の風味や香りを閉じ込めます。
特に生肉の場合、ドリップが流れ出てしまうことがあります。
パッケージに立体感がなく、商品の魅力を伝えにくい場合があります。
スキンパックとは、食品をトレーやフィルムの上などに乗せ、その上から加熱したフィルム状の蓋材で覆い、シールすると同時に下から空気を抜くことで食品にフィルムを密着させ、真空状態で食品を包装する技術です。
密着させることで空気を遮断し、食品の酸化を防ぐだけでなく、ドリップの量も抑えることにより、賞味期限の延長をできるのが特徴です。ヨーロッパを中心に採用されてきた包装技術の1つで、近年ではアメリカを始め様々な国で採用されています。
近年は日本でも食品ロス対策として、導入している企業も増えてきています。
スキンパックは、主に底材(食品を載せる皿)と蓋材(食品を覆うフィルム)の2つの部品で構成されます。これらには食品の性質に応じた素材が選ばれ、共通して用いられるのがEVA(エチレン―酢酸ビニル共重合体)などのオレフィン系樹脂です。
蓋材には、EVAのほか、PVDC(塩化ビニリデン樹脂)、EVOH(エチレン―ビニルアルコール)などのバリア層や、アイオノマー樹脂が使用され、必要に応じて強度を高めるためナイロンを加えることもあります。同様の構成を持つ底材では、オレフィン系樹脂やバリア層のほか、紙とプラスチックの複合素材が採用され、環境負荷を軽減する工夫も見られます。
このように、スキンパックは素材の特性を活かして食品の鮮度保持や輸送効率を向上させています。
製品を台紙やトレイの上に配置します。
透明なフィルム(主にPVCやPEなど)を加熱し、柔軟性を持たせます。これにより、フィルムが製品の形状に合わせて変形しやすくなります。
加熱されたフィルムを製品の上から多い被せることで真空状態を作り出し、フィルムが製品の形状にピッタリと密着します。フィルムを密着させると共に空気を抜くことで空気を遮断するため、酸化を防ぎます。
密着したフィルムを冷却し硬化させます。その後、余分なフィルムを切り取り、完成品として取り出します。
このように、機械で加熱した蓋材のフィルムを製品に被せ、密着させると共に空気を抜くことで内容物にピタッと追従する包装ができあがります。様々な形の内容物を形を崩さずに包装することができ、密着することでドリップの軽減や、酸化防止が可能となり、消費期限延長の効果があります。
フィルムが食品に密着するため、立体感と光沢が生まれ、商品の高級感や鮮度を視覚的にアピールできます。
ドリップが食品の内部に留まりやすいため、旨みを逃さず、おいしさを保ちます。
ドリップの流出を防ぐことで、食材の品質劣化を抑制し、賞味期限をより長く延長できます。生肉の場合、消費期限を最大16日間程度まで延ばすことが可能です。
専用の包装機が必要となるため、一般的な真空包装機よりも初期導入コストが高くなります。(目安として、約300万円〜)
パンやケーキのように空気を多く含む食品は、フィルムの密着によって形が崩れるため不向きです。

スキンパックは、他の包装方法と比べ、食品の鮮度保持や見栄えの面で特徴があります。以下に主な包装方法との違いと各包装のメリットをまとめました。
両者以外にも、食品の鮮度保持を目的とした包装方法がいくつかあります。
2枚のフィルムの間に食品を挟み、空気を抜きながら熱で接着する方法です。ハムやウィンナーなどの加工品によく使われますが、ボトム材のくぼみに商品を設置する作業が必要で、完全な自動化が難しく、一定の人員が必要となる場合があります。
容器内の空気を、窒素や二酸化炭素などのガスと入れ替えて密閉する方法です。食品の性質に合わせたガスを充填することで、劣化や変色を遅らせ、賞味期限を延長できます。ただし、内部から酸素を完全に排除できないため、微量の酸素による劣化リスクが残ることがあります。
日本のスーパーなどでは、陳列棚に空いたスペースができないよう、過剰に商品を陳列して販売する傾向があります。見映えが良くなる一方で、消費期限切れによって売れ残ってしまう商品が毎日発生しており、食品ロスとして多くの量が廃棄されています。
スキンパック包装によって消費期限を延ばすことで、食品ロスの大幅な削減が可能です。
スキンパック包装は、底材と蓋材を使用した従来のトレー包装による販売方法と違い、蓋材の代わりにフィルムを使用することで、プラスチック使用量の削減をすることが可能です。また底材には紙板などの素材も使用でき、紙板を使用した場合のプラスチック使用量は、トレー包装に比べ最大20%もの削減が可能と言われています。
スキンパック包装は、商品の鮮度劣化の進行を抑え、添加物に頼ることなく、食品のロングライフ化が可能となります。ロングライフ化をすることで、消費者の利便性、食品ロスの削減に繋がるだけでなく、プロセスセンターを活用した生鮮加工、配送・在庫管理・陳列頻度の見直しなど、小売現場における作業の効率化を図ることも可能です。
■環境問題への取り組みに関する記事はこちら
SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標と世界の取り組みをわかりやすく解説 食品ロス(フードロス)とはなにか?削減のための対策や取り組みを解説します
近年、食品ロス削減や商品の付加価値向上を目的に、スキンパック包装を導入する企業が増えています。
精肉の鮮度向上とフードロス削減のため、スキンパック包装を導入しました。
参考:
フードロス削減の象徴は「真っ赤じゃない肉」 採用広がる精肉の真空スキンパック包装 | 未来コトハジメ)
プロセスセンターでスキンパック包装を活用し、賞味期限の長い商品の製造に取り組んでいます。
参考:
食肉一次加工品 | スターゼンの加工品 | 商品情報 | スターゼン株式会社 ■プロセスセンターに関する記事はコチラ
プロセスセンターとは?インストア加工との違いやメリットを解説 | 食品用包装資材に関連するお役立ち情報
スキンパック包装機の導入には初期費用がかかりますが、消費期限の延長による廃棄コストや値下げ販売の削減を考慮すると、資材コストの増加分を十分にカバーできる可能性があります。
株式会社TOSEIのSP-4434は、クラス最小サイズながらも、2パック同時包装機能や自動フィルムカット機能など、様々な機能の搭載を実現しています。
セッティングも非常に簡単で、フィルムは蓋をあげるだけで交換作業が可能なだけでなく、型の交換も1分程度でできるようになっています。
液晶タッチパネルの採用により、直感的で操作しやすいのも特徴です。
スキンパック包装は、食品をトレーやフィルムに載せ、加熱したフィルムで密閉し、空気を抜いて真空状態で包装する技術です。この方法により、酸化を防ぎ、ドリップの量を抑えることで賞味期限を延長できます。ヨーロッパを中心に採用され、近年日本でも食品ロス削減の一環として導入が進んでいます。
スキンパックは、EVAなどのオレフィン系樹脂を使用した底材と、PVDCやEVOHを含むバリア層を持つ蓋材で構成されます。これにより、食品の鮮度保持と輸送効率が向上します。
メリットとしては、消費期限の延長やドリップの流出防止、鮮度と美味しさの視覚的アピールが挙げられます。デメリットとしては、包装機の高コストや消費者が違和感を抱く可能性、適さない食品がある点が挙げられます。
スキンパックは他の包装方法と比較して、真空包装やMAP包装、深絞り包装といった方法と異なり、形状にフィルムが密着し、ドリップの漏れが少ない点が特徴です。また、環境面ではプラスチック使用量の削減や食品ロス削減に貢献します。
企業例としては、イオンリテール株式会社様がスキンパックを導入して精肉の鮮度向上とフードロス削減に取り組んでおり、スターゼン株式会社様はプロセスセンターでのスキンパック包装を活用し、ロングライフ商品を生産しています。
静岡産業社では、機械・設備支援サービスを行う、機械専門チームを設けており、この記事で紹介してきたスキンパック包装機をはじめ、様々な機械・設備を取り扱っております。お客様の要望に合わせ、最適なご提案をさせていただくとともに、導入後の修理やメンテナンスなど、アフターフォローもしっかりさせていただきます。
また、スキンパック包装をするには、包装機だけでなく、フィルムや底材の選定も必要です。フィルムや底材には様々な種類や特徴、商品によって向き不向きなどがあり、適切な資材を選ぶ必要があります。
静岡産業社では包装資材の専門チームも設けており、適切なフィルムや底材のご提案もさせていただきますので、スキンパック包装機を導入する際は、お気軽にご相談ください。