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スキンパック包装とは?他の包装方法との違いや、メリット・デメリットについて詳しく解説
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目次
スキンパック包装とは?
スキンパックとは、食品をトレーやフィルムの上などに乗せ、その上から加熱したフィルム状の蓋材で覆い、シールすると同時に下から空気を抜くことで食品にフィルムを密着させ、真空状態で食品を包装する技術です。密着させることで空気を遮断し、食品の酸化を防ぐだけでなく、ドリップの量も抑えることにより、賞味期限の延長をできるのが特徴です。ヨーロッパを中心に採用されてきた包装技術の1つで、近年ではアメリカを始め様々な国で採用されています。
近年は日本でも食品ロス対策として、導入している企業も増えてきています。
スキンパックに使われる素材
スキンパックは、主に底材(食品を載せる皿)と蓋材(食品を覆うフィルム)の2つの部品で構成されます。これらには食品の性質に応じた素材が選ばれ、共通して用いられるのがEVA(エチレン―酢酸ビニル共重合体)などのオレフィン系樹脂です。蓋材には、EVAのほか、PVDC(塩化ビニリデン樹脂)、EVOH(エチレン―ビニルアルコール)などのバリア層や、アイオノマー樹脂が使用され、必要に応じて強度を高めるためナイロンを加えることもあります。同様の構成を持つ底材では、オレフィン系樹脂やバリア層のほか、紙とプラスチックの複合素材が採用され、環境負荷を軽減する工夫も見られます。
このように、スキンパックは素材の特性を活かして食品の鮮度保持や輸送効率を向上させています。
スキンパックの仕組み

1.製品配置
製品を台紙やトレイの上に配置します。2.フィルム加熱
透明なフィルム(主にPVCやPEなど)を加熱し、柔軟性を持たせます。これにより、フィルムが製品の形状に合わせて変形しやすくなります。3.真空成形
加熱されたフィルムを製品の上から多い被せることで真空状態を作り出し、フィルムが製品の形状にピッタリと密着します。フィルムを密着させると共に空気を抜くことで空気を遮断するため、酸化を防ぎます。4.冷却・仕上げ
密着したフィルムを冷却し硬化させます。その後、余分なフィルムを切り取り、完成品として取り出します。このように、機械で加熱した蓋材のフィルムを製品に被せ、密着させると共に空気を抜くことで内容物にピタッと追従する包装ができあがります。様々な形の内容物を形を崩さずに包装することができ、密着することでドリップの軽減や、酸化防止が可能となり、消費期限延長の効果があります。
スキンパック包装のメリット・デメリット
スキンパックの主なメリット
食品の消費期限が延びる
真空パック方式により、食品が空気(酸素)に触れないため劣化を抑制することができます。消費期限の延長により、食品廃棄を減らし、食品ロス対策への1つの手段となります。肉の旨み成分(ドリップ)の流出防止
ドリップ(肉汁)の流出を防ぎ、見た目の美しさと旨みを保持しやすくなります。ドリップの漏れがないため、清潔感があるのもポイントです。視覚効果で購買意欲を向上
立体的で鮮やかな食品の形状・色が見え、消費者に食品の鮮度と美味しさをアピールします。縦置き・横置きが可能なため、陳列の自由度が高いのも特徴です。スキンパックの主なデメリット
包装機の初期導入コストが高い
導入コストが高額であり、大きな初期投資が必要となります。導入コストが商品の価格に影響する場合、消費者の購買意欲低下のリスクがあります。見た目に消費者が違和感を抱く可能性
普段見慣れているトレー包装とは異なるため、立体的でリアルな見た目が、一部の消費者に受け入れられるまでに時間がかかる可能性があります。適さない食品がある
空気を含む商品(例えばパン、ケーキ)は、スキンパックによる真空状態で形状が損なわれてしまうことがあります。すべての食品に万能ではない点に留意が必要なため、導入する際にはどのような食品に使用するかしっかりと検討する必要があります。スキンパックと他の包装技術の違い

スキンパックは、他の包装方法と比べ、食品の鮮度保持や見栄えの面で特徴があります。以下に主な包装方法との違いと各包装のメリットをまとめました。
真空包装との違い
どちらも内部の空気を吸引して食品を真空状態にしますが、スキンパックでは食品の形状にフィルムが密着するため、ドリップ(肉汁)が漏れにくいのが特徴です。それに比べ、一般的な真空包装では、ドリップがしみ出しやすくなる傾向があります。深絞り包装との違い
深絞り包装は、底材を金型で容器状に成形し、食品を入れて蓋材を熱接着する方法です。スキンパックではトレイや板状の底材が一般的で、フィルムを用いる深絞り包装とは底材の構成が異なります。また、スキンパックは食品をピッタリ覆うのに対し、深絞り包装は容器内に余裕を持たせた構造が多いです。MAP包装との違い
MAP包装は、パッケージ内の空気を窒素や二酸化炭素などのガスに置き換える方法です。スキンパックが真空状態を作るのに対し、MAP包装はガスを充填することで食品の劣化を防ぎます。特に、酸素を含めたガス調整により、特定の食品の品質保持が可能です。その他の包装によるメリット
真空包装
比較的シンプルな工程で食品の劣化を抑制するため、汎用性が高い。深絞り包装
容器状の底材により、液体食品や加工品に対応可能。MAP包装
ガスの充填で食品の風味や色合いを保ちやすい。スキンパックを使用した環境問題への取り組み
フードロス削減
日本のスーパーなどでは、陳列棚に空いたスペースができないよう、過剰に商品を陳列して販売する傾向があります。見映えが良くなる一方で、消費期限切れによって売れ残ってしまう商品が毎日発生しており、食品ロスとして多くの量が廃棄されています。スキンパック包装によって消費期限を延ばすことで、食品ロスの大幅な削減が可能です。
プラスチック使用量の削減
スキンパック包装は、底材と蓋材を使用した従来のトレー包装による販売方法と違い、蓋材の代わりにフィルムを使用することで、プラスチック使用量の削減をすることが可能です。また底材には紙板などの素材も使用でき、紙板を使用した場合のプラスチック使用量は、トレー包装に比べ最大20%もの削減が可能と言われています。食品のロングライフ化
スキンパック包装は、商品の鮮度劣化の進行を抑え、添加物に頼ることなく、食品のロングライフ化が可能となります。ロングライフ化をすることで、消費者の利便性、食品ロスの削減に繋がるだけでなく、プロセスセンターを活用した生鮮加工、配送・在庫管理・陳列頻度の見直しなど、小売現場における作業の効率化を図ることも可能です。■環境問題への取り組みに関する記事はこちら
SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標と世界の取り組みをわかりやすく解説
食品ロス(フードロス)とはなにか?削減のための対策や取り組みを解説します
企業の事例

イオンリテール株式会社
イオンリテール株式会社様ではプロセスセンターへ真空スキンパック包装を導入し、精肉の鮮度向上とフードロス削減に取り組んでいます。2019年にダイエーが真空スキンパック包装の国内における先駆けとも言える試験導入を開始し、2021年には関東30店舗で輸入牛肉を中心に展開を拡大しました。
包装機械の高コストが課題ですが、2023年までに全国展開を目指しています。効率化と環境配慮が戦略の柱です。
(参考:フードロス削減の象徴は「真っ赤じゃない肉」 採用広がる精肉の真空スキンパック包装 | 未来コトハジメ)
スターゼン株式会社
スターゼン株式会社様では、全国に9カ所のプロセスセンターを導入しており、消費地型プロセスセンターが5カ所、産地型プロセスセンターが4カ所となっています。消費地型プロセスセンターでは、様々な専用機器と高度な食肉加工技術により、味付け商品や簡便商品などマーケットニーズに応えた商品を製造しています。
産地型プロセスセンターでは、産地工場内で鮮度の良い原料を使用したスキンパック包装による商品など、ロングライフ(日持ちのする)商品の加工製造をしています。
(参考:食肉一次加工品 | スターゼンの加工品 | 商品情報 | スターゼン株式会社)
■プロセスセンターに関する記事はコチラ
プロセスセンターとは?インストア加工との違いやメリットを解説
おすすめのスキンパック包装機
TOSPACK SP-4434(株式会社TOSEI)

株式会社TOSEIのSP-4434は、クラス最小サイズながらも、2パック同時包装機能や自動フィルムカット機能など、様々な機能の搭載を実現しています。
セッティングも非常に簡単で、フィルムは蓋をあげるだけで交換作業が可能なだけでなく、型の交換も1分程度でできるようになっています。
液晶タッチパネルの採用により、直感的で操作しやすいのも特徴です。
まとめ
スキンパック包装は、食品をトレーやフィルムに載せ、加熱したフィルムで密閉し、空気を抜いて真空状態で包装する技術です。この方法により、酸化を防ぎ、ドリップの量を抑えることで賞味期限を延長できます。ヨーロッパを中心に採用され、近年日本でも食品ロス削減の一環として導入が進んでいます。スキンパックは、EVAなどのオレフィン系樹脂を使用した底材と、PVDCやEVOHを含むバリア層を持つ蓋材で構成されます。これにより、食品の鮮度保持と輸送効率が向上します。
メリットとしては、消費期限の延長やドリップの流出防止、鮮度と美味しさの視覚的アピールが挙げられます。デメリットとしては、包装機の高コストや消費者が違和感を抱く可能性、適さない食品がある点が挙げられます。
スキンパックは他の包装方法と比較して、真空包装やMAP包装、深絞り包装といった方法と異なり、形状にフィルムが密着し、ドリップの漏れが少ない点が特徴です。また、環境面ではプラスチック使用量の削減や食品ロス削減に貢献します。
企業例としては、イオンリテール株式会社様がスキンパックを導入して精肉の鮮度向上とフードロス削減に取り組んでおり、スターゼン株式会社様はプロセスセンターでのスキンパック包装を活用し、ロングライフ商品を生産しています。
スキンパック包装機を導入するには
静岡産業社では、機械・設備支援サービスを行う、機械専門チームを設けており、この記事で紹介してきたスキンパック包装機をはじめ、様々な機械・設備を取り扱っております。お客様の要望に合わせ、最適なご提案をさせていただくとともに、導入後の修理やメンテナンスなど、アフターフォローもしっかりさせていただきます。また、スキンパック包装をするには、包装機だけでなく、フィルムや底材の選定も必要です。フィルムや底材には様々な種類や特徴、商品によって向き不向きなどがあり、適切な資材を選ぶ必要があります。
静岡産業社では包装資材の専門チームも設けており、適切なフィルムや底材のご提案もさせていただきますので、スキンパック包装機を導入する際は、お気軽にご相談ください。
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