食品の鮮度を保ち、風味を逃さず保存できるため、飲食店や食品加工工場はもちろん、家庭でも活躍する便利な真空袋ですが、実は袋の材質によって仕上がりに大きな差が出ることをご存じですか?適切な材質を選ばないと、しっかり真空状態にならず、保存効果が落ちてしまうことも。
また、食品トレーとは異なり、無地のシンプルなデザインが多いため、同じような食品が真空袋に入っていると見分けがつきにくいという課題から、以下のようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
・他店の商品と差別化したい
・オリジナルデザインの真空袋が欲しい
・無地の真空袋にラベルを貼るのが手間
そこで、本記事ではオリジナルの真空袋を作る際の基本知識から材質の選び方、用途別のおすすめまで、分かりやすく解説するとともに、真空袋を使いながら他の商品と差別化を図る方法もご紹介いたします。
真空袋とは、食品を酸化から守り、新鮮な状態で長持ちさせるための包装袋です。食品の包装資材として広く使用されており、スーパーなどで販売されているハムやソーセージ、魚の切り身など、多くの食品が真空包装されており、賞味期限を延ばすのに役立っています。
真空袋の主な特徴は、酸素を通しにくい「ナイロン(外側)」と「ポリエチレン(内側)」を張り合わせた構造を持つ点です。このため、一般的に「ナイロンポリ袋」とも呼ばれています。袋の外側に使われているナイロン素材が酸素を遮断し、内容物の酸化を防ぐため、食品の品質を長期間保持できます。
一方、日常的に使用する薄いビニール袋(ポリ袋)は、ポリエチレンのみで作られており、酸素を通しやすいため、食品の酸化が進みやすくなります。そのため、長期間の保存には真空袋が使用されています。
また、真空袋のように酸素などの気体を通さない「バリア性」を持つ袋を「ガスバリア袋」と呼びます。ガスバリア袋には透明なものやアルミ箔を貼り合わせたものなど複数の種類があり、用途に応じて選ぶことができます。
オリジナルの真空袋を作ることで得られるメリットをいくつかご紹介します。
デザイン性の高いパッケージは、商品をより高級に見せることができます。特に、競争の激しい市場では、パッケージのクオリティが購買意欲に直結します。
自社のロゴやデザインを入れることで、ブランドの認知度を向上させることができます。特に、食品や工業製品などのパッケージとして使用する場合、統一感のあるデザインは顧客に信頼感を与えます。
オリジナルデザインの真空袋を使うことで、他社商品との差別化を図り、独自性を強調できます。特に、店舗やECサイトで販売する際、パッケージの個性が売上に直結することもあります。
市販の真空袋では対応できない特殊なサイズや材質の選択が可能です。
耐久性を強化 ⇒ 厚みの変更、耐熱・耐寒対応
バリア性の向上 ⇒ 酸素・湿気・光を遮断する素材
特定の用途向け ⇒ 食品・医療・工業用など
生産ロットを多くすることで既製品よりもコストダウンできる可能性があるのも魅力です。年間で多くの製造が見込まれている商品資材では、大量発注をすることでコスト削減を行っている企業も珍しくありません。また、大量発注だけでなく、現在使用している真空袋の材質をダウングレードすることでもコスト削減ができる可能性があります。
食品用であれば防湿・防酸素性能、耐冷・耐熱性が必要とされることが多く、工業用であれば強度・耐久性が必要になり、医療用であれば無菌性や抗菌性能が重要視されたりと、用途によって必要な機能や仕様は様々です。
食品用:防湿・防酸素性能、耐冷・耐熱性が必要
工業用:強度・耐久性が必要
医療用:無菌性や抗菌性能が重要
真空袋にはさまざまなサイズがあり、食品の大きさや容量に合わせて選ぶことが重要です。袋のサイズは、収納する食品に適したものを選びましょう。もし規格袋に合うサイズがない場合、別注で食品に合わせた袋を製造することも可能です。
また、真空袋には厚みや材質が異なる種類があります。一般的に、70μ前後の厚みがよく使用されますが、流通面での心配がある場合や、より耐久性が求められる場合には、100μ以上の厚みの袋を使用することもあります。
内容物や流通条件、保管条件に応じて、適切な厚みの選択が重要です。
三方シール袋(平袋)は、左右と底の3辺がシールされ、開口部が1辺のみのシンプルな形状の袋です。密封性が高く、真空包装にも適しているため、食品や医薬品、工業部品の保存に広く使用されています。
この袋は食品業界で特に人気があり、肉・魚・チーズ・加工食品などの鮮度を保つために活用されます。また、医薬品や精密機器の密封包装にも適しており、品質の劣化を防ぎます。さらに、小型の乾燥剤や防腐剤パックとしても利用されるなど、多用途に対応可能です。
三方シール袋はフラットな形状で収納しやすく、軽量で取り扱いが簡単です。さらに、材質やサイズのカスタマイズが可能で、用途に応じた最適な包装を実現できます。
ガゼット袋は、側面または底にマチがあり、立体的な形状を持つ袋です。この構造により、袋が自立し、大容量の内容物を収納することができます。開口部を広げて中身を簡単に詰めることができ、収納や取り出しがスムーズです。
ガゼット袋は、コーヒー豆や茶葉、乾燥食品に広く使用されます。大容量を必要とする粉末や液体の食品(スープの素、調味料など)のパッケージにも適しています。また、ペットフードや穀物類の包装にも最適で、形が崩れず、保管しやすいのが特徴です。
マチ付き設計により、袋は立体的に広がるため、隅々まで内容物を入れることができます。さらに、耐久性が高く、内容物が袋内で動きにくいため、長期間の保管にも適しています。大容量の保存が可能で、特に商業用や家庭用に便利なパッケージです。
スタンドパックは、底部が広がる構造により自立することができるパウチタイプの袋です。この特長により、商品を陳列したり、使用後に保存する際に非常に便利です。また、開封後も再封できるデザインが多く、保存性に優れています。
スタンドパックは、ソース、スープ、飲料などの液体商品のパウチ包装に広く使用されます。また、ペースト状の食品(はちみつ、ジャムなど)や化粧品、医療用ジェル、シャンプーなどにも適しています。軽量で持ち運びにも便利で、使いやすさが特長です。
自立型のデザインにより、見栄えもよく、陳列が簡単です。さらに、密閉性が高いため、内容物の鮮度を長期間保つことができます。再封可能なタイプも多く、家庭での利用に便利です。商業用途から家庭用まで幅広いニーズに対応できるパッケージです。
バリア性とは、袋が水分や気体、特に酸素や湿気をどれだけ通しにくいかを示す特性のことです。真空包装では、袋内の空気を排出して密封しますが、袋の素材が酸素を通しやすいと、時間の経過とともに外部の酸素が袋内に入り込み、真空状態が崩れてしまいます。これにより、食品が酸化しやすくなったり、カビが発生したりする可能性が高まります。
そのため、真空袋には酸素を通さない「ガスバリア性」が必要となります。ガスバリア性が高い袋は、外部から酸素の侵入を防ぎ、食品の品質を守ります。特に冷蔵や常温で保存する食品の場合、酸素バリア性を備えた袋を使用することで、酸化や風味の低下を抑えることができます。
一方、冷凍保存する場合は酸素バリア性がなくても問題ないことがありますが、常温や冷蔵保存が求められる場合は、酸素バリア性を重視した袋選びが推奨されます。例えば、バリア性に優れた「バリアNY」や「LLDPE」素材の袋は、湿気や酸素をしっかり遮断し、食品を長期間新鮮に保つことができます。
食品を真空包装した後、ボイル殺菌(100度未満の熱殺菌)やレトルト殺菌(100℃以上の加圧加熱殺菌)を行うことがあります。熱殺菌に適した真空袋を選ぶ際のポイントは、主に素材、強度、バリア性、シール性能に関わる要素が重要です。
まず、袋の素材はポリエステル(PET)、ナイロン(PA)、ポリプロピレン(PP)など、高温殺菌に対応できる耐熱性を持っているものを選ぶ必要があります。袋の厚みは、薄すぎると破れやすく、厚すぎると加熱時間が長くなるため注意が必要です。熱殺菌後に酸素や湿気が入り込まないよう、バリア性の高い袋を選ぶことも重要です。加熱時には膨張や圧力がかかるため、四方シール袋やガゼット袋のように膨張を吸収できる形状のものが適しています。
これらの要素を踏まえて、用途に最適な真空袋を選ぶことで、食品や製品の品質を確保できます。
真空袋は主にNY(ナイロン)とPE(ポリエチレン)の素材で作られており、真空袋には大きくわけて3つの作り方があります。それぞれ簡単に解説していきます。
NYフィルムとPEフィルムを接着剤で貼り合わせる「ドライラミネート法」を用いた製造方法です。この方法では、溶剤で希釈した接着剤を塗布・乾燥させた後、熱と圧力を加えて貼り合わせ、袋を製造します。
ドライラミネートで製造された袋は接着強度が高く、耐熱性・耐薬品性に優れているため、レトルト食品の包装や薬品用包装資材など、高い耐久性が求められる用途に適しています。
NYフィルムとPEフィルムを溶かした樹脂で貼り合わせる「押し出しラミネート法」を用いた製造方法です。この方法では、溶かした樹脂をフィルムの間に流し込み、冷却して貼り合わせることで袋を製造します。
押し出しラミネートで製造された袋は、厚みや剛性のある素材にも適用可能で、一般包装材や食品包装、工業用フィルムなど幅広い用途に使用されています。また、高速加工が可能なため、生産効率が高くコストメリットに優れている点も特徴です。
NY樹脂とPE樹脂を同時に吹き上げて積層する「インフレーション法」を用いた製造方法です。この方法では、複数の樹脂を同時に押し出し、多層フィルムを形成して袋を製造します。
バリア性、耐熱性、シール性など、それぞれ異なる特性を持つ樹脂を組み合わせることで、多層構造のフィルムを作ることが可能です。そのため、用途に応じた多機能なフィルムを開発でき、食品包装から医薬品包装まで幅広く活用されています。
用途に応じた適切なフィルム素材を選びます。
PET(ポリエステル)は、強度が高く引き裂きに強い特性を持つ素材で、印刷適性が優れており、鮮明な印刷が可能です。また、高温にも耐性があり、軽量で透明性が高いのが特徴です。
主に食品パッケージ(乾燥食品やお菓子)、工業用パッケージ、そして贈答用パッケージに使用されます。透明性が高いため、商品の見た目をアピールしたい場合に特に効果的です。
利点としては、見た目が美しく販促効果が高いこと、また高い引張強度により破れにくい点が挙げられます。さらに、衝撃や摩擦から中身をしっかりと守るため、商品を安全に保存できます。
NY(ナイロン)は、耐ピンホール性に優れ、非常に高い耐久性を持つ素材です。摩耗に強く、引き裂きにも強い特徴がありますが、透明度が低いため、内側の内容物は見えにくいのが特徴です。熱シール性が高く、封をしっかりと閉じることができ、封をすることで品質を守るため、長期間の保存が可能です。
主に粉末や液体、オイル、調味料などの包装に適しています。特に耐摩耗性や破れに強いため、重い物や過酷な取り扱いが予想される商品に使用されます。
利点としては、高い強度と耐久性により、長期間の保存が可能であり、負荷の高い使用でも破損しにくい点が挙げられます。
AL(アルミニウム)は、非常に高いバリア性を持ち、酸素や湿気、光を遮断する特性があります。厚みがあり、しっかりとした印象を与えつつ、高い遮蔽性で食品の鮮度を守ります。軽量でありながら、非常に強力な保護能力を誇り、保存性を大きく向上させます。
主に高級食品、薬品、コスメティック製品、医療用パッケージなどに使用されます。特に、長期保存が求められる商品や、光や湿気に敏感な商品に最適です。
利点としては、高い保護性能によって品質の劣化を防ぎ、見た目も高級感がありギフトやプレミアム商品のパッケージに最適です。完全な密封が可能で、保存期間を大幅に延ばすことができます。
PE(ポリエチレン)は、薄いフィルムとして柔軟で扱いやすく、引き裂きに強く、耐湿性に優れています。薄くても十分な強度を持ち、印刷性は劣りますが、シンプルなパッケージには最適な素材です。
主に日常的な食品や雑貨、医薬品のパッケージに使用されます。特にコストを抑えつつ、一定の耐久性が求められる場合に非常に有用です。
利点としては、安価で大量生産に向いており、汚れに強く表面が滑らかであるため、扱いやすく、表面の質感が良いです。
袋に印刷するデザインの作成方法には、自社でデザインを作成する方法と、デザイン会社に依頼する方法の2つがあります。
デザイン会社に依頼する場合、まず適切な依頼先の企業を探すことが必要です。次に、商品コンセプトやデザインの希望を整理し、それをもとに依頼書を作成します。依頼の流れや必要な準備は、デザイン会社によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
これらがオリジナル真空袋を作るまでの大まかな流れとなります。

オリジナル真空袋を作る際に、素材や形状以外でオリジナリティを演出するその他の方法を紹介します。
1つ目の方法として、オリジナルのラベルシールを作成し、それを真空袋に貼る方法です。ラベルを複数用意することで、1つの真空袋でいくつものバリエーションを表現することが可能で、安価かつ小ロットでできることや、おおよそ10日程度でラベルが出来上がるというフットワークの軽さから、オリジナルパッケージを作成する際に実践のしやすい方法です。
一方で、ラベルシールを貼る作業が必要となるため、作業工程が増えてしまうことや、それに充てる人件費が発生します。また、複数のラベルを使用することで様々な商品にすることが可能ですが、ラベルが増えるにつれ、在庫スペースや在庫管理などが大変になるというデメリットもあります。
こちらは真空袋に直接デザインを印刷する方法です。ラベルシールを袋に貼る方法とは違い、直接印刷することでより鮮明な色を表現できます。またラベルを貼る手作業がないため、今までの作業工程の流れを崩さずに取り入れることが可能なことに加え、デザインが剥がれる心配もほとんど気にする必要がありません。
食品を保存する際、鮮度を保ち美味しさを長持ちさせるために真空袋は便利です。しかし、無地のシンプルなデザインのため、他の食品と区別がつきにくいという課題もあります。この問題を解決するために、オリジナルの真空袋を作ることで他の商品と差別化することができます。
オリジナル真空袋を作ると、商品価値やブランド認知度の向上、競合との差別化が可能になります。また、袋のサイズや素材をカスタマイズすることで、特定の用途に最適なパッケージが作れます。さらに、大量生産によるコスト削減の可能性もあります。
真空袋の選び方には、サイズ、形状、バリア性、耐熱性などを考慮し、用途に合った袋を選ぶことが大切です。また、デザインの印刷方法にも工夫を凝らすことで、オリジナリティを加えることができます。
オリジナル真空袋は、単なる包装資材を超えて、商品の魅力を引き出し、消費者の目を引く重要な役割を果たします。
静岡産業社では、3500社以上の調達先と15万点以上の取扱商品を活かし、お客様のニーズに最適な提案を行っています。
包装資材としてのトレーや真空袋に加え、レジ袋やシールなどの副資材も幅広く取り扱っており、メーカーとの強固な関係を活かしたオリジナル商品の開発も可能です。
既製品のサイズや材質、厚みでは対応が難しい真空袋に関しては、お客様のご要望に沿ったオリジナルの真空袋をメーカーと連携してご提案させていただきます。
自社商品の魅力をより効果的にアピールしたいお客様の課題解決をサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。