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私たちの食卓を支える「ナフサ」とは? プラスチック容器の原料から背景まで

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私たちの食卓を支える「ナフサ」とは? プラスチック容器の原料から背景まで
スーパーマーケットのお惣菜売り場、コンビニエンスストアのスイーツ、飲食チェーンのテイクアウトボックスなど、私たちの食卓や日々の暮らしには「食品容器」をはじめとするプラスチック製品が欠かせません。商品の見栄えや品質維持、衛生管理に不可欠な資材であり、毎日の生活を便利で豊かにしてくれる身近な存在です。

しかし、こうした食品関連資材が「何から作られているのか」、そして近年ニュースでよく耳にする「資材の価格高騰」がどのような仕組みで起きているのか、詳しくご存知の方は少ないのではないでしょうか。

実は、ペットボトルやビニール袋、お弁当容器など、私たちの身の回りにあるプラスチック製品の大半は「ナフサ」という物質から作られています。ナフサ価格の動向は、最終的な食品容器のコストや、スーパーでの商品価格に直結する非常に重要な要素です。

本記事では、食品関連資材を扱う当社が、あらゆるプラスチック製品の生みの親である「ナフサ」の正体や作られ方、食品容器の材質ごとの特徴について、徹底解説いたします。






ナフサとは? 石油から生まれる「透明な液体」の正体



原油からわずか10%しか採れない貴重な資源

ナフサとは、地下深くから採掘された原油を精製する過程で得られる、無色透明の液体です。採掘されたままのドロドロとした黒い液体である「原油」には、様々な成分が混ざり合っています。

これを精製プラントで高温に加熱して蒸気に変え、沸点(液体から気体に変わる温度)の違いを利用して冷却・分離していく「蒸留」というプロセスを経ます。 この過程で、原油からはガソリン(約31%)、軽油(約25%)、重油(約17%)といった様々な成分が抽出されますが、ナフサはガソリンの副産物として原油全体のわずか「10%ほど」しか得られない貴重な成分です。

ナフサは非常に揮発性が高く、常温でも簡単に蒸発してしまうというガソリンに似た性質を持つ軽質炭化水素の一種であり、「粗製ガソリン」と呼ばれることもあります。




ナフサからプラスチック製品ができるまで



では、液体の状態であるナフサが、どのようにして固体の食品容器やビニール袋に変わっていくのでしょうか。

抽出されたナフサは分解工場へ運ばれ、800℃以上という極めて高温の分解炉の中に送り込まれて加熱されます。すると「熱分解反応」という化学反応が起こり、沸点の違いによって「エチレン」「プロピレン」「ブタジエン」「ベンゼン」「トルエン」「キシレン」といった基礎化学品に細分化されます。これらはプラスチックのもとになる物質であり、水素と炭素が結びついた小さな分子であることから「モノマー」と呼ばれます。

生成された物質はそれぞれ異なる役割を持ちます。例えばエチレンは食品包装などのポリエチレンの原料となり、プロピレンは合成繊維や自動車部品にも使われます。ブタジエンはタイヤなどの合成ゴムの製造に使われ、ベンゼンやトルエンなどは化学産業の溶媒として利用されています。

身近なプラスチックの名前によく「ポリ」という言葉がつきますが、これはギリシャ語で「たくさん」を意味する言葉です。例えばエチレンというモノマーを1000個以上もつなぎ合わせることで「ポリエチレン」となり、プロピレンをつなぎ合わせることで「ポリプロピレン」といったプラスチックの原料が完成するのです。

さらに、様々な製品として加工しやすいように添加剤を加え、「ペレット」と呼ばれる数ミリ程度の小さな粒状にします。このペレットを溶かして金型に流し込んだり、薄いシート状に引き伸ばしたりすることで、私たちが日々目にする多様な形のプラスチック製品が生み出されています。

驚くべきことに、日本国内で消費される原油全体(2022年実績で約4億キロリットル)のうち、プラスチックの製造に使われているのは全体のたった「約3%(1,119万キロリットル)」にすぎません。原油の大部分は自動車や発電所などのエネルギーとして燃やされており、これほど身の回りにプラスチック製品が溢れているにもかかわらず、その製造に必要な石油の量は意外と少ないことが分かります。




ナフサから生まれる! 食の現場で活躍する多様なプラスチック資材



ナフサから作られるプラスチックには非常に多くの種類があり、それぞれの性質や特徴を生かして、食のビジネス現場で使い分けられています。ここでは、食品容器として身近な代表的素材のメリットや特徴をご紹介します。


PP(ポリプロピレン)

ナフサから作られた「プロピレン」を原料とします。耐熱性と耐油性に優れており、耐熱温度は約110℃あるため電子レンジでの加熱も可能です。お弁当容器の本体や、惣菜のフードパックなどに使い捨て食品容器として幅広く使用されています。

さらに、PPにタルクなどの無機物を配合して耐熱温度を130℃まで高めた「PPF」という素材は、温かいお弁当や油分の多い揚げ物の容器に最適です。



PS(ポリスチレン)

ナフサから作られた「ベンゼン」などを経て製造されます。透明で硬く、断熱性が高いのが特徴です。このPSを数倍から数十倍に発泡させたものが「PSP(発泡ポリスチレン)」、いわゆる発泡スチロールです。素材のうち90%以上が空気であり、熱が伝わりにくいため手で持っても熱さを感じにくく、スーパーの精肉や鮮魚の食品トレーなどに使われます。

一方で、PSを縦横二方向に引き伸ばして強度と透明性を高めた「OPS」は、お弁当の透明な蓋やフルーツ容器などに用いられ、中の食品を美味しく見せる役割を果たしています。



PET(ポリエチレンテレフタレート)

飲料用のペットボトルの素材として広く知られていますが、食品容器としても大活躍しています。透明性が非常に高く、耐油性にも優れているため、サラダやお惣菜の容器にぴったりです。ただし、耐熱温度が60℃程度と低いため、電子レンジでの加熱には向きません。



PE(ポリエチレン)

ナフサ由来の「エチレン」が多数連なった素材で、油や薬品に強く、加工しやすいのが特徴です。日々の生活に欠かせないレジ袋やポリ袋、食品用ラップフィルムなどは、このポリエチレンから作られています。


このように、ナフサから生まれる多種多様なプラスチックは、食品の鮮度を保ち、安全に運び、美味しく見せるために、それぞれの持ち味を発揮しています。さらに近年では、各容器メーカーが素材の欠点を補う独自開発を行っています。

例えば、PPの弱点であった断熱性を高めた素材(SD:スマートダッシュ)や、PSにPPを配合して耐熱性を105〜110℃まで高め電子レンジ対応を可能にした素材(BF、MSD)など、高機能な容器が次々と誕生しています。




日本のナフサ調達事情と「輸入依存」の現実



私たちの日常生活や産業に不可欠なナフサですが、日本国内の調達事情に目を向けると、「極端な輸入依存」という深刻な現実が浮かび上がってきます。日本は天然資源に乏しく、国内での石油埋蔵量が非常に限られているため、ナフサの原料となる原油のほぼすべてを海外からの輸入に頼らざるを得ません。

2022年のデータによると、日本におけるナフサの総消費量は3,639万キロリットルでした。そのうち、輸入した原油を国内で精製して作られたナフサが1,419万キロリットル、ナフサ単独として直接輸入された量が2,220万キロリットルとなっています。つまり、ナフサという製品の状態で見た場合でも、国内消費の約60%以上を直接的な輸入からまかなっているのが現状です。

しかし、さらに注視すべきは「中東地域への依存度」の高さです。国内で精製されるナフサの原料となる原油は9割以上が中東産であり、直接輸入されるナフサも3分の2以上が中東地域から輸入されています。これらを総合すると、日本のナフサの実質的な中東依存度は約8割に達するとされており、このような極めて偏った調達構造は、国際情勢の悪化などの有事の際に大きなリスクとなります。

過去には、中東以外の輸入先として半分ほどを占めていた韓国が、情勢を受けてナフサの輸出を禁止した事態も発生しました。また、ナフサそのものだけでなく、ペットボトルの原料となるペット樹脂(タイなどから輸入)など、ナフサを加工して作られた製品そのものも海外からの輸入に強く依存しています。

ホルムズ海峡の封鎖などが発生すれば、ナフサの国際的な供給網は著しく混乱し、日本国内で食品容器や包装資材が手に入らなくなるという事態に直結する恐れを常に孕んでいるのです。



輸入依存の課題を解決する「リサイクル」と「環境配慮素材」

輸入に極端に依存しているリスクを減らし、安定的にプラスチック製品を使い続けるために、現在最も重要視されているのが「プラスチックの循環(リサイクル)」と「環境配慮型素材への転換」です。

日本全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにする取り組みが加速する中、これまでのように「輸入した原油からナフサを作り、使い終わったら燃やす」という一方通行のシステムは転換期を迎えています。さらに将来的に自動車の電動化(EV化)が進めば、ガソリンの生産量が減少し、ガソリン精製の副産物であるナフサの生産量そのものも激減することが見込まれています。つまり、輸入だけに頼っていると、将来的にプラスチックの原料確保そのものが難しくなる恐れがあるのです。

そこで求められているのが、使い終わった廃プラスチックを「新たなプラスチックの原料」として生まれ変わらせる技術です。代表的な技術として「ケミカルリサイクル」があります。これは、廃プラスチックを単に溶かして再加工するのではなく、熱分解などの化学的な処理を行ってエチレンやプロピレンといった「基礎化学品(モノマー)」の状態まで戻し、再び新品のプラスチック原料として利用する画期的な技術です。この技術が社会に定着すれば、海外から輸入するナフサの量を大きく減らし、国内にある廃プラスチックを貴重な「資源」として循環させることが可能になります。

また、すでに私たちの身近なところでも、独自の技術を用いた環境配慮型素材が活躍し始めています。例えば、ある容器メーカーが開発した「エコO-PET」という次世代素材は、市場で回収されたPETボトルなどを独自のリサイクル工程で再生した原料から作られています。透明性や耐油性といった従来のPET素材の強みを活かしつつ、製造工程の工夫によって耐熱性を高めており、石油から新たに作られたプラスチックと同等以上の機能を発揮しています。




まとめ

ここまで見てきたように、私たちが普段何気なく使用している透明なフードパックやスーパーのレジ袋は、遥か遠くの地下から採掘された原油を起源とし、高度な技術で精製された「ナフサ」から作られています。ナフサは私たちの便利で衛生的な生活を根底から支える極めて重要な資源であると同時に、日本の構造上、海外からの輸入に大きく依存している側面を持ち合わせています。

だからこそ、日々の生活の中でプラスチック製品を大切に使い、使用済みの容器のラベルに記載されている「プラ」や「PET」といった識別マークに従って正しく分別し、リサイクルに協力することが極めて重要になります。私たちが正しく分別したプラスチックは、ケミカルリサイクル技術や新しいリサイクル素材へと生まれ変わり、輸入に頼りきらない日本の安定的な資源循環へと繋がっていくのです。 
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