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ナフサ依存からの脱却と「使い捨て」から「循環」の食品包装へ

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ナフサ依存からの脱却と「使い捨て」から「循環」の食品包装へ
私たちの暮らしに欠かせないプラスチック製品の多くは、石油から精製される「ナフサ」を原料に作られています。ですが、このナフサは海外から輸入する原油に大きく依存しています。そのため、近年の原油価格の高騰や国際情勢の不安定化は、プラスチック製品や包装資材の値上がりとなって企業経営に直接影響します。

問題はコストだけではありません。ナフサを高温で熱分解してプラスチックの基礎原料を作る工程では、大量の二酸化炭素(CO2)も排出されます。つまり、ナフサへの依存は経済面でも環境面でも大きな課題を抱えているのです。

こうした背景から、「新品の石油」であるナフサに頼り続けるビジネスモデルは、すでに限界が見え始めています。さらに、2022年に施行された「プラスチック資源循環促進法」などを受けて、企業にはプラスチックを「使い捨てる」社会から、資源を「循環させる」社会へと移行する姿勢が求められています。






メカニカル vs ケミカル:リサイクル技術の進化と選択



ナフサ依存を減らす最も直接的な方法は、一度使ったプラスチックをもう一度資源として使う「リサイクル」を進めることです。現在、その方法は大きく「メカニカルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の2つに分けられます。


メカニカルリサイクル(物理的再生)

メカニカルリサイクルは、使用済みプラスチックを細かく砕き、洗浄し、溶かして再び原料に戻す方法です。比較的わかりやすく、すでに広く使われている手法といえます。

この方法の大きな強みは、新たに化石燃料からプラスチックを作る場合に比べて、CO2排出量を大幅に減らせる点です。一般に約60〜70%の削減が期待でき、必要なエネルギーも比較的少なく抑えられます。

一方で、何度も再生を繰り返すと品質が落ちやすいことや、食品汚れが残った容器は食品用途に再利用しにくいことが課題です。ただし、飲料業界のペットボトルでは「ボトルtoボトル」と呼ばれる水平リサイクルがすでに確立されており、安全性や品質を保った再生ボトルが広く実用化されています。



ケミカルリサイクル(化学的再生)

これに対してケミカルリサイクルは、廃プラスチックを分子レベルまで分解し、不純物を取り除いたうえで、もう一度プラスチックとして作り直す技術です。

この手法の強みは、汚れや色の付いたプラスチックでも、分子レベルまで戻すことで、新品とほぼ同等の品質や安全性を持つ材料に再生できる点にあります。これまで焼却せざるを得なかった、食品残渣の付いた弁当容器なども、再資源化できる可能性があります。

ただし、その分、分解やガス化の工程で多くのエネルギーが必要になります。さらに、高度な技術や大きな設備投資も必要で、現時点ではコスト面が大きな課題です。

今後は、用途や回収のしやすさ、求められる品質に応じて、これら2つの技術をうまく使い分けることが重要になります。そして、再生プラスチックを自社容器に積極的に採用していくことが、結果としてナフサ使用量の削減につながります。




「紙」へのシフト:プラスチック代替の注意点と最新動向


脱プラスチックの流れの中で、容器をプラスチックから紙などの素材へ切り替える動きが広がっています。ただし、「紙にすれば自動的に環境に優しい」と考えるのは危険です。大切なのは、製造から輸送、使用後の処理まで含めて評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)の視点です。


紙製容器へのシフトにおける注意点とコストバランス

紙は木材由来の再生可能資源であり、生分解性を持つという強みがあります。その一方で、製造工程では多くの水と熱エネルギーを消費します。また、プラスチックより重くてかさばりやすいため、輸送コストや輸送時のCO2排出量が増えやすいという面もあります。

さらに、食品容器として使う場合には、水や油に弱いことが大きな課題になります。この弱点を補うため、従来の紙容器では内側に薄いプラスチックフィルムを貼るラミネート加工が一般的でした。しかし、このような複合素材の容器は、紙としてもプラスチックとしてもリサイクルしづらく、結果として焼却されるケースが少なくありませんでした。


最新のバリア技術とバガスなどの新素材

こうした問題を解決するため、近年は新しい技術が進んでいます。たとえば、プラスチックフィルムの代わりに特殊な水性バリアコーティングを紙の表面に施すことで、耐水性や耐油性を確保しながら、使用後はそのまま紙としてリサイクルできる素材が登場しています。

特に注目されているのが、PFASを使わない「PFASフリー耐油剤」です。環境や健康への影響が懸念される有機フッ素化合物を避けながら、必要な性能を確保できる点で、安全性と環境配慮の両立が期待されています。

また、サトウキビの搾りかすである「バガス」を使ったパルプモールド容器も有望です。バガスは本来捨てられる副産物を有効活用する素材であり、木材を使わず、生分解性も高いという利点があります。耐水・耐油コーティングを加えれば、汁物や油物、電子レンジ対応の容器としても使えます。テイクアウト容器としても優秀です。

コスト面では、従来の大量生産されたプラスチック容器より割高になりやすいものの、環境配慮の姿勢をわかりやすく示せるため、企業のブランドイメージ向上や、環境意識の高い消費者からの支持獲得につながる可能性があります。




消費者の行動を促す「リサイクルしやすい」パッケージ設計



どれだけ優れたリサイクル技術や代替素材があっても、消費者が使用後にきちんと分別し、回収につながらなければ循環は成立しません。そこで重要になるのが、製品の企画段階から廃棄と再資源化まで見据えた「環境配慮設計」です。


単一素材(モノマテリアル)での構成

従来の食品パッケージは、酸素や湿気を防いで賞味期限を延ばすために、異なる種類のプラスチックを何層にも重ねて作られていました。こうした多層構造は高機能ですが、素材ごとに分けられないため、リサイクルが非常に難しくなります。

これに対する解決策が「モノマテリアル化」です。たとえば、単一のポリエチレンだけで必要な機能を持たせるような設計にすることで、使用後に資源として回しやすくなります。



ラベルの剥がしやすさと分別への配慮

消費者にとって分別が面倒であれば、回収の質は下がります。そのため、分別の手間を減らす工夫も欠かせません。たとえば、ラベルをはがす必要がない「ラベルレス商品」は、その代表例です。分別が簡単になることで、より良質なリサイクル資源を回収しやすくなります。

また、飲み終わった後に小さく折りたためるボトルなど、ごみのかさを減らせる設計も広がっています。こうした工夫は、消費者が無理なく、そして前向きに分別へ参加するきっかけになります。



消費者とのコミュニケーション

パッケージには、単に商品を包む以上の役割があります。たとえば、「この容器は分別回収されたプラスチックから再生されました」といった情報や、正しい分別方法をわかりやすく表示することで、消費者の理解と協力を得やすくなります。

環境配慮の取り組みをきちんと伝えることは、消費者の共感を生み、行動変容を促します。たとえコスト増があったとしても、それがブランドへの信頼や支持として返ってくる可能性は十分にあります。




地域の資源循環:国内完結型の地産地消リサイクルモデル


(引用元:エフピコ方式のリサイクル|食品トレー容器のエフピコ)

最後に重要なのが、回収した資源をどのように循環させるかという仕組みづくりです。かつて日本は、使用済みプラスチックの多くを海外に輸出していました。しかし、各国で輸入規制が強化されたことで、国内で完結する資源循環システムの整備が急務となりました。


企業と自治体が連携した回収システム

この課題に対し、企業と自治体が連携し、地域の中で資源を循環させる取り組みが広がっています。たとえば、小売店や公共施設に回収ボックスを設置し、消費者が洗って乾かした食品トレーやペットボトルを持ち込む仕組みです。

回収されたトレーは、商品配送後のトラックの帰り便を使って効率よく工場へ運ばれます。その後、選別・粉砕・洗浄を経て再びプラスチック原料となり、新しい食品トレーに生まれ変わります。いわゆる「トレーtoトレー」の仕組みです。これは、企業・店舗・消費者が一体となって地域で資源を回す、地産地消型の循環モデルといえます。



地域コミュニティやイベントを通じた資源循環

資源循環の取り組みは、日常の店舗だけにとどまりません。オフィスビルやドラッグストアの店頭に加え、プロスポーツのスタジアムや大規模イベントでも回収の仕組みが広がっています。

会場に専用の回収ボックスを設置し、「正しく分別すれば再びボトルになる」と伝える啓発活動やゲームを行うことで、来場者に楽しみながら分別の重要性を理解してもらう取り組みもあります。また、イベント全体でバガスなどのプラスチックフリー容器を使い、海洋ごみゼロへの意識を高める例も見られます。

こうした活動は、単なるごみ回収では終わりません。地域住民や来場者を巻き込みながら、サステナブルな社会づくりへの参加意識を育てる力があります。




企業の取り組み

すでに多くの企業が具体的な取り組みを始めています。代表的な事例を3つのテーマに分けてご紹介します。


1. 消費者が「分別しやすい」「ゴミを減らせる」パッケージの工夫

サントリーグループ

ペットボトルのラベルを剥がす手間をなくした「ラベルレス商品」を基幹商品(天然水、クラフトボス、伊右衛門など)で展開しています。また、「サントリー天然水」の2Lボトルでは、飲み終わった後に約6分の1のサイズまで小さくたたみやすい容器を開発し、家庭でのゴミのかさばりを解消しつつ、楽しく分別できる工夫をしています。

参考:Recycle:「ボトルtoボトル」水平リサイクルの推進 サントリーグループのサステナビリティ サントリー


アサヒ飲料株式会社

「らくエコボトル」という2Lペットボトルを採用し、**従来比で約25%〜28%の軽量化(プラスチック使用量の削減)**を実現しています。これによりCO2排出量を減らすだけでなく、持ちやすさや、飲んだ後のつぶしやすさも向上させています。

参考:取組み別 | 環境配慮設計事例集 | 一般財団法人 食品産業センター



2. バイオマスやバガスなど「環境配慮素材」への切り替え

ハーゲンダッツ ジャパン株式会社

2024年2月から、ミニカップ製品のフタ(リッド)を、石油由来のプラスチックからサトウキビを原料とした植物由来の「バイオマスプラスチック」へと順次切り替えています。

参考:環境に配慮した包材へ切り替え | ニュースリリース | ハーゲンダッツ ジャパン Häagen-Dazs


ウミオス(マルハニチロ)株式会社

冷凍食品の「12個入りしゅうまい」のプラスチックトレーについて、容器の容積を10%削減し、さらにバイオマス素材を10%配合することで、プラスチック自体の使用量削減に取り組んでいます。

参考:重点課題(マテリアリティ)| サステナビリティマネジメント | サステナビリティ | Umios



3. 企業や地域が連携した「資源をぐるぐる回す」回収モデル

株式会社エフピコ

スーパーなどの店頭に回収ボックスを設置し、全国約10,000拠点から使用済みの発泡スチロール製トレーやペットボトルを回収しています。回収には、スーパーに商品を届けたトラックの「帰り便」を活用して効率よく運び、再び新しい食品トレーに生まれ変わらせる「トレーtoトレー」という独自の循環型リサイクルシステムを構築しています。

参考:エフピコ方式の循環型リサイクルfor Kids|食品トレー容器のエフピコ


コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社

使用済みペットボトルを再びペットボトルに戻す「ボトルtoボトル(水平リサイクル)」を推進するため、全国33の自治体や、ウエルシア、スギ薬局などのドラッグストアと協業して店頭回収を行っています。さらに、Jリーグのサンフレッチェ広島や埼玉スタジアムなどのスポーツ・イベント会場では、「7秒以内にペットボトル本体とキャップ、ラベルを分別する」というゲーム感覚のチャレンジを実施し、子どもたちにも分別の楽しさと重要性を啓発しています。

参考:埼玉県、浦和レッズなどと連携し、埼玉スタジアム2〇〇2でサーキュラーエコノミー実証実験を開始 |ニュースリリース|ニュース|コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社




まとめ

ナフサ価格の高騰やプラスチックごみ問題は、企業にとって大きな負担であり、避けて通れない課題です。しかし見方を変えれば、これは「使い捨て」のビジネスモデルから抜け出し、「循環」という新しい価値を社会に提供する機会でもあります。

メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルの特性を理解し、再生素材を活用すること。紙やバガスなどの代替素材を、コストと機能のバランスを見ながら取り入れること。消費者が分別しやすい単一素材化やパッケージ設計を進めること。さらに、小売店や自治体と連携し、国内で資源を回す仕組みに参加すること。

こうした取り組みを一つずつ積み重ねていくことで、企業は資源価格の変動リスクを抑えながら、消費者からの支持とブランド価値の向上を同時に実現できます。
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