食品工場におけるカビの発生は、単なる“汚れ”の問題ではありません。製品への異物混入やカビ臭によるクレーム、監査評価の低下、大規模な自主回収(リコール)など、企業の信頼そのものを揺るがす重大リスクにつながります。
しかし現場では、
・清掃してもまた発生する
・一部だけ対策しても広がってしまう
・原因が分からず対症療法になっている
といった悩みを抱えているケースも少なくありません。
実は、食品工場はカビにとって非常に繁殖しやすい環境です。しかも、目に見える黒ずみだけを除去しても、素材内部に入り込んだ「菌糸」や空気中を漂う「胞子」が残っていれば、再発を防ぐことはできません。
本記事では、食品工場でカビが繰り返し発生する原因を整理しながら、発生しやすい場所、正しい除去方法、そして再発防止のための具体策までを分かりやすく解説します。

カビ対策を行う上で重要なのは、まず「なぜ増えるのか」を理解することです。カビは微生物の一種で、「菌糸」と呼ばれる糸状組織を伸ばして素材内部へ入り込みながら増殖します。さらに成長すると、「胞子」を空気中へ大量に飛散させ、工場内全体へ広がっていきます。
私たちが目にする黒や緑色の汚れは、胞子が集まったものです。つまり、見えている部分だけを除去しても、内部の菌糸や周囲に飛散した胞子が残っていれば再発してしまいます。

カビは以下3つの条件が揃うことで急速に増殖します。
一般的に20〜30℃程度で活発に繁殖します。さらに種類によっては冷蔵環境でもゆっくり増殖可能です。
湿度60%を超えると増殖しやすくなり、70%以上では急激に繁殖します。食品工場は洗浄や蒸気、水使用工程が多く、高湿度になりやすい環境です。
食品残渣、油脂、タンパク質、調味料、ホコリなども栄養源になります。つまり「少しの汚れ」でもカビにとっては十分なエサになります。

カビの放置は、衛生面だけでなく企業活動そのものへ大きな影響を与えます。
最も大きなリスクが、製品へのカビ混入です。加熱後製品への胞子付着やカビ臭移りは、クレームやリコールへ直結します。特にSNS時代では、1件の異物混入が企業ブランドへ大きなダメージを与える可能性があります。
空気中に浮遊した胞子を吸い込むことで、アレルギーや呼吸器症状を引き起こすケースがあります。工場内環境の悪化は、従業員満足度や定着率にも影響します。
カビは建材内部へ菌糸を伸ばすため、壁材やシーリング材の劣化を早めます。結果として修繕コスト増加にもつながります。
取引先監査や外部監査では、天井や壁面のカビ発生が重大指摘となるケースもあります。衛生管理体制そのものを疑われる原因になりかねません。
食品工場では加熱工程の熱を逃がすため、強力な排気設備を使用しています。しかし排気が強すぎると工場内が「陰圧状態」となり、壁や天井の隙間から外気が流入します。その際、天井裏などに潜んでいたカビ胞子が工場内へ侵入し、製品汚染につながることがあります。
特に注意が必要なのは、
・加熱後の放冷工程
・空冷工程
・包装前エリア
などです。
また、スポットエアコンや集塵機、コンプレッサー周辺も胞子飛散源になりやすいため注意が必要です。
小麦粉や香辛料などの粉体原料には、自然由来のカビ胞子が含まれている場合があります。計量・混合作業時に粉塵とともに胞子が飛散し、設備の隙間や高所に蓄積。長期間放置されることで、工場内の汚染源になるケースがあります。
水回りは高温多湿になりやすく、さらに食品残渣も溜まりやすいため、カビの温床になりやすい場所です。特に排水溝周辺は見落とされやすく、胞子飛散源になるケースもあります。
「クリーンルームだから安全」と思われがちですが、実際には湿度上昇によって内部でカビが発生するケースがあります。洗浄時の蒸気や水分によって湿度が上昇し、フィルター吹出口周辺などで増殖することがあります。クリーンルーム内で胞子が飛散すると重大な製品汚染へ発展するため、定期点検や浮遊菌測定が重要です。

カビ除去では「擦って落とす」だけでは不十分です。むしろ間違った清掃によって汚染を広げてしまうケースもあります。
まずは70〜80%程度のアルコールを噴霧し、胞子を不活性化させます。いきなり擦ると胞子が空気中へ飛散するため危険です。噴霧後は10分程度置き、静かに拭き取ります。
表面を除去しても、内部には菌糸が残っています。そのため、次亜塩素酸ナトリウムなど塩素系洗浄剤を使用し、菌糸を根本から破壊する必要があります。この際、雑巾やペーパーへ薬剤を含ませ、「擦る」のではなく「叩くように当てる」のがポイントです。
洗浄剤を除去した後は十分に洗い流し、必ず完全乾燥させます。水分が残れば、再びカビが増殖する原因になります。
最も危険なのが、ブラシやデッキブラシによる強い擦り洗いです。強く擦ることで、
・胞子が大量飛散する
・工場全体へ汚染が拡大する
・壁や床に微細な傷がつく
・傷内部へ菌糸が入り込む
といった二次被害を招く可能性があります。「落とす」ことだけを目的にせず、「飛散させない」ことが重要です。
食品残渣を残さないことが基本です。特に水産加工工場など湿度管理が難しい現場では、「栄養分を除去する」ことが最も現実的な対策になります。
湿度70%以上を長時間維持しないよう、除湿機や換気設備を活用します。また、陰圧状態を防ぐため、
・給気と排気のバランス調整
・隙間のシーリング補修
なども重要です。
通常清掃だけでは管理が難しい箇所には、防カビコーティングが有効です。また、浮遊胞子対策としてオゾン発生器などによる空間除菌を組み合わせることで、再発リスク低減につながります。
汚れが溜まりやすい構造は、カビ発生リスクを高めます。そのため、
・分解洗浄しやすい設備
・清掃死角を減らした配置
・水溜まりが発生しにくい設計
など、清掃しやすい構造へ改善していくことが重要です。

カビ対策は、一度除去して終わりではありません。重要なのは、
・どのエリアで発生しやすいか
・どの季節に増えるか
・どの工程が危険か
を継続的に把握し、改善を繰り返すことです。そのためには、
・浮遊菌測定
・定期点検
・従業員教育
・特別清掃計画
などを組み合わせたPDCA運用が不可欠です。
特に「擦らない」「飛散させない」といった基本ルールを現場全体へ浸透させることが、長期的な品質維持につながります。
食品工場におけるカビ問題は、単なる清掃不足ではなく、
・温湿度
・空気の流れ
・設備構造
・清掃方法
・原料管理
など、複数要因が重なって発生しています。そのため、「見えるカビだけを除去する」対策では根本解決になりません。重要なのは、
・胞子を飛散させない
・菌糸まで除去する
・栄養源を残さない
・湿度環境を管理する
・再発しにくい構造へ改善する
という総合的な視点です。
継続的な監視と改善を積み重ねることで、初めて安全で衛生的な製造環境を維持することが可能になります。
食品工場・倉庫・店舗など、湿度や温度管理が求められる現場では、日常清掃だけでは防ぎきれないカビトラブルが発生するケースも少なくありません。静岡産業社では、現場環境に合わせた「カビ除去サービス」のご提案も行っております。
表面的な除去だけでなく、再発防止まで見据えた施工により、美観維持・衛生環境改善・異物混入リスク低減など、さまざまな課題解決をサポートいたします。
また、カビ対策だけでなく、日常清掃で使用する洗剤・清掃用具の選定や、衛生管理に関するご相談にも対応しております。現場ごとの課題に合わせて最適なご提案をさせていただきますので、カビ対策でお困りの際は、ぜひお気軽に静岡産業社までご相談ください。
▼カビ除去サービスの記事はコチラ