「ISO22000を取得しました!」
食品会社のホームページや工場の入り口で、こんな文字を見かけたことはありませんか?「なんだか凄そうだけど、数字ばかりで中身がサッパリわからない……」 そう思うのも無理はありません。しかし、このISO22000(アイ・エス・オー 22000)は、私たちが毎日口にする「ごはん」の安全を支える、非常に重要で、かつ人間味あふれるルールなのです。
今回は、食品業界に入ったばかりの方から、会社の未来を考える経営者の方まで、誰が読んでも「なるほど、そういうことか!」と納得できる解説をお届けします。
まず、ISO22000を一言で表現するなら、「誰が作っても、どこで作っても、高い水準で安全を確保できる『世界共通のスーパー・マニュアル』」です。
例えば、大人気のカレーショップがあるとしましょう。 店主が「俺の勘でスパイスを配合すれば最高に美味い!」と言っていても、もし店主が風邪で休んだらどうなるでしょうか?
・代わりのスタッフが、古いお肉を使ってしまったら?
・鍋の洗い方が不十分で、昨日の汚れが残っていたら?
・冷蔵庫の温度設定を間違えて、材料が傷んでいたら?
どんなに味が良くても、一度でも「食中毒」を出してしまえば、そのお店は信頼を失い、潰れてしまいます。
ISO22000は、こうした「個人の勘」や「うっかりミス」を排除し、組織全体で「限りなく安全なものを提供し続ける」ための仕組みです。
私たちの食卓に届く食べ物は、実は長い長い「バトンリレー」を経てやってきます。
どこか一箇所でも転んだら負け、想像してみてください。
・農家さんが野菜を作る
・運送業者がトラックで運ぶ
・食品工場で加工・袋詰めをする
・スーパーが店頭に並べる
・消費者が買って食べる
これは、いわば4人5脚のようなリレーです。 もし、工場がピカピカに掃除されていても、最初の運送業者がトラックの冷蔵庫のスイッチを入れ忘れていたら?(あるいは温度設定を間違えていたら?)野菜は傷み、工場に届く頃には菌が増えています。逆に、どれほど良い材料を仕入れても、スーパーでの保管がずさんなら台無しです。
昔のように「近所の農家から直接買う」時代なら、相手の顔が見えるので安心でした。しかし現代は、地球の裏側で作られた材料が、いくつもの会社を経由して届きます。
そこで、「どの会社も、この『ISO22000』という共通ルールを守っていれば、リレーのバトンを安心して渡せるよね」という世界共通の指標が必要になったのです。これが、ISO22000が世界中で普及している最大の理由です。

ISO22000の中身を解剖すると、大きく分けて2つの「強力な武器」が合体していることがわかります。それが「HACCP(ハサップ)」と「ISO 9001(アイ・エス・オー 9001)」です。
よく「HACCPと何が違うの?」と聞かれますが、「HACCPという現場の技を、ISOという会社全体の仕組みで包み込んだもの」だと考えてください。
HACCPは、一言でいうと「ピンポイント監視術」です。テスト勉強で「教科書全部を丸暗記」するのは大変ですよね。でも、先生が「ここだけは絶対にテストに出るぞ!」という重要ポイントを教えてくれたら、そこを重点的に対策しますよね。それがHACCPです。
食品作りにおいて、「ここを間違えたら命に関わる!」という重要ポイント(例:加熱温度、金属混入チェックなど)を特定し、そこを徹底的に記録・監視します。
HACCPが「現場の技」なら、ISOは「チームの運営ルール」です。どれほど優れた「加熱温度ルール(HACCP)」があっても、
・新人がルールを知らなかったら?
・記録をつけるペンが壊れたまま放置されていたら?
・社長が「掃除より利益を優先しろ!」と言い出したら?
現場の技は機能しません。ISOの部分では、
・「教育」:全社員にどうやって安全を教えるか?
・「リーダーシップ」:社長自らが安全に責任を持つ
・「改善」:ミスが起きたら、人のせいにするのではなく「仕組み」を直す といった、会社を運営する上での土台を作ります。
「現場の厳しい目(HACCP)」+「会社としての強い意志(ISO)」=重要な国際基準(ISO22000) というわけです。(※厳密にはISO9001そのものを含むわけではありませんが、「PDCA」「責任と役割の明確化」「継続的改善」といった考え方は共通しています。)

ISO22000の取得には、お金も時間もかかります。それでも多くの企業が目指すのは、それ以上のメリットがあるからです。
「うちは安全です!」と100回言うよりも、「ISO22000を取得しています」という証明書を見せる方が、取引先(特に大手チェーンや海外企業)は納得します。いわば、「ビジネスのパスポート」です。
「誰が何をすべきか」が明確になるため、現場の混乱が減ります。「これ、誰がやるんですか?」という無駄なやり取りが消え、業務が効率化します。
自分たちの仕事が世界基準のルールに基づいていると知ることで、社員の意識が「ただの作業」から「安全を守るプロ」へと変わります。
もし商品にトラブルがあっても、ISO22000を取得している企業なら「いつ、どこで、誰が作ったか」をすぐに遡って調べることができます。
定期的に外部の専門家(審査員)がチェックに来るため、企業は常に緊張感を持って安全対策を続けなければなりません。

「仕組み」と言われてもイメージしにくいので、あるパン工場を例に、具体的な行動を見てみましょう。
「毎日、仕事が終わったら工場内を綺麗にすること」という曖昧なルール。
「床は専用の洗剤Aを50倍に薄めて使い、ブラシで15分掃除する。終わったらチェックリストにサインをし、週に一度、リーダーが汚れが残っていないか目視で確認する」という具体的な手順になります。
例えば、パンに小さな針が混じっているという連絡があったとします。 ISO22000を導入している工場では、パンの袋にある記号を見るだけで、
・「そのパンを焼いたのは〇月〇日の午前10時」
・「使った小麦粉のロット番号はこれ」
・「その時の金属検出機の動作テストの結果はこれ」
といった情報を数分で引き出せます。原因がすぐわかるので、被害が広がる前に対応できるのです。
ISO22000は事故をゼロにする魔法ではありませんが、万一の際に被害を最小限に抑え、迅速に対応するための仕組みです。
私たちの食卓に届く食べ物は、農家から工場、スーパーまで多くの人を経由する「安全のバトンリレー」で運ばれます。現代の複雑な流通では、一箇所のミスが大きな事故に繋がるため、全員が同じ基準で動くための共通ルールが必要なのです。
この仕組みは、現場の急所を監視する「技」であるHACCPと、組織の教育や責任を明確にする「運営の土台」であるISO9001のいいとこ取りをしています。「個人の勘」や「うっかり」に頼らず、会社全体で安全を「仕組み化」するのが特徴です。(※厳密にはISO9001そのものを含むわけではありませんが、「PDCA」「責任と役割の明確化」「継続的改善」といった考え方は共通しています。)
導入により、企業は「世界基準の信頼」というパスポートを得られ、消費者はトラブル時に原因を即座に特定できる「透明性」という安心を得られます。まさに、食に関わる全員を「安全」でつなぐ重要な国際基準なのです。
静岡産業社では、メールマガジンやLINE配信を通じて、食品業界の最新情報や現場で役立つ情報を定期的に発信しています。
今回ご紹介したISO22000に関する情報も、今後さらに重要性が高まる分野のため、新たな情報が分かり次第、随時発信していく予定です。
メールマガジン・LINE登録をご希望の方は、弊社営業担当者またはお問い合わせフォームよりお気軽にご登録ください。