HACCPに沿った衛生管理は事業者の規模や業種によって適用される基準が異なり、それぞれに適した対応が必要です。そこでこの記事では、その違いについて詳しく解説し、さらには認証機関の役割についてもわかりやすく説明します。
- HACCPに沿った衛生管理の2つの区分について
- 国内のHACCP認証の種類
- HACCP認証・認証を取得するメリット
- まとめ
HACCP(危害分析重要管理点)は、食品の安全性を確保するために導入された国際的な衛生管理手法です。
適用にあたり、日本では「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2つの区分が設けられています。
まずは、「HACCPに基づく衛生管理」について、詳細を確認していきましょう。
「HACCPに基づく衛生管理」とは、大規模事業者や高リスク食品を扱う事業者を対象に、HACCPの7原則を忠実に適用するものです。
食品製造・加工工程において危害要因を徹底的に分析し、それを管理するための具体的な手順を策定・実行します。
HACCPに基づく衛生管理の主な特徴は、次の2点です。
・科学的根拠に基づく管理
危害要因(微生物、異物混入、化学物質など)を分析し、それらを予防する管理ポイントを設定し、妥当性が確認された管理基準を設定します。
・記録と検証
管理の実施状況を記録し、必要に応じて検証を行うことで衛生管理の精度を高めます。
・大規模な食品製造業者
・高度なリスク管理が必要な業態(乳製品、食肉加工業など)
一方、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の詳細は、次の通りです。
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は、小規模事業者や低リスク食品を扱う事業者を対象に、HACCPの考え方を簡略化して適用する基準です。
より現実的で実施可能な方法として、業界団体の手引書を活用して取り組むことが奨励されています。
■簡略化された手法
一般的衛生管理を中心に、HACCPの基本概念を取り入れています。
■実施しやすいガイドライン
業界団体が提供する手引書を基に、適切な管理ポイントを設定しています。
■対象事業者
・小規模事業者(例:地域密着型の飲食店や販売業者)
・加工度の低い食品を取り扱う事業者(例:生鮮野菜販売)
日本国内では、主に業界団体、地方自治体、民間審査機関の3つの主体がHACCP認証を行っています。
それぞれの認証方法には特徴があり、事業者の規模やニーズに応じて適切な認証を選ぶことが求められます。
業界団体が提供するHACCP認証は、特定の業界に特化した基準に基づいて行われます。
食品の種類や加工工程に応じた手引書を活用し、事業者が基準を満たしているかを審査します。
業界団体のHACCP認証の特徴は、次の3点です。
■専門性が高い基準
業界特有のリスクや要件を反映した基準で審査を実施します。
■手引書の活用
業界団体が提供するガイドラインに基づき、認証プロセスが進行します。
■対象事業者
業界ごとの特定の衛生管理が求められる事業者(例:飲料、乳製品、冷凍食品業界)です。
次に、地方自治体のHACCP認証について見ていきましょう。
地方自治体が独自の基準を設けてHACCP認証を行う場合があります。
地域密着型の事業者や、小規模事業者を対象にした簡易的な認証プロセスが特徴です。
■地域に特化した支援
地域の食品安全施策と連動し、スムーズな認証が可能です。
■小規模事業者への配慮
小規模事業者でも取り組みやすい簡易基準を採用するケースが多いです。
■対象事業者
地域密着型の小規模食品事業者(例:地元のレストラン、農産物直売所)
最後に、民間審査機関のHACCP認証についてご紹介します。
民間審査機関によるHACCP認証では、国際基準に基づく高いレベルの審査が行われます。
ISO 22000やFSSC 22000など、国際的な食品安全管理規格と連携した認証取得が一般的です。
■国際基準との互換性
輸出を視野に入れた食品事業者に最適です。
■認証の信頼性が高い
厳格な審査を通じて、顧客や取引先からの信頼を得られます。
H4 対象事業者
・輸出を行う事業者
・高付加価値の食品を扱う事業者

HACCP認証・認証の取得は、食品事業者にとって単なる法的要件の遵守にとどまらず、ビジネスの成長や顧客の信頼獲得に大きな影響を与えます。
以下で、HACCP認証・認証を取得する具体的なメリットを解説します。
HACCP認証は、食品の安全性と衛生管理が国際的な基準を満たしていることを証明します。
このため、消費者や取引先に対して高い安全性をアピールできます。
多くの小売業者や外食チェーンでは、取引先にHACCP認証を取得していることを条件とする場合があります。
このため、認証を取得することで新たなビジネス機会が広がります。
国際的な食品取引ではHACCPが求められることが一般的です。
特に、欧州や北米市場では、HACCP認証の有無が取引可否に直結することが多いです。
HACCPの導入により、作業手順や衛生管理が標準化されます。
この結果、従業員間の認識を統一でき、無駄のない業務フローを構築できます。
危害要因を分析し、重要管理点を設定するHACCPの手法により、食品事故の発生を予防し、品質管理コストを削減できます。
HACCP認証を取得することで、食品衛生法などの法的要件を満たし、行政指導や罰則を回避できます。
この結果、法的リスクを最小限に抑え、安心して事業を運営できます。
HACCP認証は、単なる品質管理の枠を超えて、企業の社会的責任(CSR)や持続可能性を示す証拠となります。
消費者や投資家からの評価を高め、ブランド価値を向上させる効果が期待できます。
HACCPの導入と義務化は、食品業界全体の安全性向上と信頼性確保に欠かせません。
HACCPの義務化を受けて、多くの食品事業者が衛生管理の強化に取り組む中、自社に最適な基準と認証方法を選び、適切に対応することが求められますので、この記事で紹介したポイントを参考に、自社のHACCP対応を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、静岡産業社では、HACCP導入サポートを提供しております。
HACCP普及指導員、HACCP管理者(日本食品保蔵科学会認証)と共にお客様の工場へ訪問することも可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。