飲食店必見！HACCP義務化で実施すべきことを徹底解説

目次

1. HACCP義務化の背景
2. 飲食店がHACCPを導入しない場合の罰則は？
3. 飲む食店でHACCPを導入しないとどんな影響がある？
4. HACCP義務化で飲食店が実施するべき3つのこと
5. まとめ

HACCP義務化の背景

HACCP（Hazard Analysis and Critical Control Point／危害分析重要管理点）は、食品の安全を確保するための国際的な衛生管理手法として広く知られています。 2021年6月に施行されたHACCP完全義務化は、日本の食品業界全体で衛生基準を引き上げることを目的としています。 その背景には、消費者の安全意識の高まりや国際基準への適応があり、飲食店を含む食品事業者には、新たな対応が求められています。

HACCP義務化の必要性

食品事故の防止

日本国内外で発生してきた食品事故を防ぐため、HACCPは効果的な管理方法として位置付けられています。 飲食店における衛生管理を徹底することで、食中毒や異物混入といった事故のリスクを最小限に抑えることができるのです。

国際基準への対応

HACCPは、国際的な食品安全基準として採用されており、日本でも食品の輸出拡大を見据えた対応が求められています。 このため、日本国内で製造・提供される食品の信頼性を高め、国際基準への対応が可能になります。

義務化の対象事業者

HACCPの義務化は、食品を扱う、ほぼすべての事業者に適用されます。 具体的には、食品製造業者、流通業者、そして飲食店が含まれます。 学校・病院など集団給食施設も、対象となっています。 事業規模に応じて、以下の2つの管理方法が適用されます。

HACCPに基づく衛生管理

主に大規模事業者を対象とし、詳細な危害要因分析と管理計画が求められます。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

小規模事業者向けの簡易版HACCPで、手引書を活用した導入が奨励されています。

義務化が飲食店にもたらすメリット

顧客の信頼向上

HACCPに対応することで、衛生管理が徹底された安全な飲食店として、顧客からの信頼を得ることができます。

業務効率化

衛生管理の標準化とデジタルツールの活用により、従業員の作業負担が軽減され、店舗運営の効率化が進みます。

法律リスクの軽減

食品衛生法を遵守することで、行政指導や罰則を回避し、安心して事業を展開できます。

飲食店がHACCPを導入しない場合の罰則は？

HACCPの完全義務化に伴い、すべての飲食店に対して衛生管理の基準が設けられていますが、これに違反した場合、どのような罰則が科されるのでしょうか？ HACCPに関する罰則は食品衛生法や地方自治体の条例に基づいており、具体的な対応が求められます。 以下で、HACCP未対応の際に考えられるリスクを解説します。

罰則の明記はない

HACCPそのものに直接的な罰則規定は設けられていません。 しかし、HACCP対応が求められるのは、食品衛生法に基づく法律の一部であるため、間接的に罰則の対象となる場合があります。 このため、未対応の事業者は以下のような影響を受ける可能性があります。

行政指導の対象となる

保健所や食品衛生監視員からの指導や是正命令が行われることがあります。

営業停止命令を受けるリスク

HACCP未対応が原因で重大な食品事故が発生した場合、営業停止の処分が下される可能性があります。

食品衛生法に違反した場合

食品衛生法では、HACCPの導入を怠った結果、衛生管理が不十分と判断された場合、違反として扱われます。
具体的には以下のような罰則が適用されることがあります。

罰金刑

衛生管理の不備が指摘され、改善が見られない場合、罰金が科されることがあります。

施設改善命令

調理場や保管施設の衛生状態が基準を満たしていない場合、改善命令が下されます。

営業停止

不適切な衛生管理が原因で食品事故を引き起こした場合、営業停止処分を受けることもあります。

都道府県の条例に違反した場合

HACCPの義務化に関連して、地方自治体ごとに独自の条例が設定されている場合があります。
これらの条例に違反した場合、以下のようなペナルティが科されることがあります。
地方自治体からの指導 衛生管理に関する細かな基準が設定されているため、これを遵守しない場合、指導の対象となります。
地域特有の罰則 一部の地方自治体では、罰金や改善命令を条例に基づいて定めています。

都道府県の条例に違反した場合

HACCP未対応による罰則だけでなく、以下のような信用低下が飲食店の経営に重大な影響を与える可能性があります。

顧客離れ

衛生管理が不十分だと顧客の信頼を失い、来店客数が減少する可能性があります。

取引先からの契約解除

食材供給業者や取引先から、HACCP未対応を理由に契約を見直される場合があります。

飲食店でHACCPを導入しないとどんな影響がある？

HACCPの完全義務化により、飲食店を含む食品業界では衛生管理の基準が厳しくなりました。
HACCPを導入しない場合、営業許可の取得・更新に支障をきたすだけでなく、企業イメージの低下や国際市場での競争力喪失といったさまざまな影響が生じる可能性があります。
以下で、その具体的なリスクについて解説します。

営業許可取得・更新への影響

HACCPを導入しないと、営業許可取得・更新への影響が出る恐れがあります。

営業許可の要件にHACCPが組み込まれる

HACCPの完全義務化により、営業許可の取得や更新時に、HACCP対応が確認されるケースが増えています。 特に以下のような事態が想定されます。

許可取得の遅延

衛生管理計画が不十分である場合、営業許可がスムーズに取得できない可能性があります。

更新拒否のリスク

現行の許可更新時にHACCP基準を満たしていない場合、更新が拒否される恐れがあります。

営業停止の可能性

HACCP未対応が原因で食品衛生法違反とみなされた場合、行政から営業停止命令が下ることがあります。 特に重大な食品事故を引き起こした際には、店舗運営に大きな影響を与えかねません。

企業のイメージダウン

HACCPを導入しないことで、企業のイメージダウンにもつながります。

顧客の信頼低下

HACCPは、食品の安全性を保証する国際的な基準です。 これに対応していないことが顧客に知られると、以下のようなイメージダウンを招く恐れがあります。

安全性に対する疑念

消費者は、衛生管理が行き届いていない店舗を避ける傾向があります。

口コミや評判の悪化

SNSや口コミサイトでのネガティブな評判が広がることで、新規顧客の獲得が難しくなります。

取引先との信頼関係の損失

HACCP未対応の飲食店は、食材供給業者や取引先からの信頼を失い、契約解除や取引条件の変更を迫られる恐れがあります。

海外進出への影響

海外進出を検討している場合、HACCPを導入しないと以下のようなリスクが生じます。

輸出における競争力の低下

海外市場では、HACCP対応が取引の前提条件となることが一般的です。
HACCP未対応の飲食店は、以下のような障害に直面する可能性があります。


・輸出条件を満たせない
HACCP未対応の事業者は、海外の取引先から信用されず、商談が成立しない場合があります。

・国際基準に達しない食品とみなされる
輸出先の規制をクリアできないことで、グローバル市場での競争力が著しく低下します。

・国際的なブランドイメージの損失
国内だけでなく海外展開を視野に入れる飲食店にとって、HACCP対応は不可欠な要件です。
未対応のままでは、国際的なブランドとしての信用を築くことが難しくなります。

HACCP義務化で飲食店が実施するべき3つのこと

HACCPの完全義務化により、飲食店では具体的な対応が求められています。
特に重要なのは、衛生管理計画の策定、計画に基づいた実施、そして確認記録の作成です。
これらのステップを順番に進めることで、法的要件を満たしながら効率的な衛生管理を実現できるでしょう。

衛生管理計画の策定

目的と重要性

衛生管理計画は、食品の安全性を確保するための基礎となるものです。
この計画には、調理や保管の各工程での危害要因を分析し、それに対応する管理基準を設定する内容が含まれます。

策定のポイント

■危害要因の特定
食品に影響を与える可能性のある微生物、異物混入、温度管理などを分析しましょう。

■重要管理点（CCP）の設定
各工程で特に注意が必要なポイントを特定し、具体的な基準を設定しましょう。

■計画の文書化
衛生管理計画は必ず文書化し、従業員全員が確認できる状態にしておきましょう。

■活用できるリソース
業界団体が提供する手引書を参考にすることで、小規模店舗でも効率的に計画を策定できます。

計画に基づく実施

計画の実行

策定した衛生管理計画に基づいて、実際の店舗運営に取り入れます。 従業員が一貫して同じ基準で作業を行うためには、以下のステップが必要です。

従業員教育

計画の内容を従業員に理解させるため、定期的な研修を実施しましょう。

衛生管理ツールの導入

温度計や衛生管理ソフトウェアなど、計画実行をサポートするツールを活用しましょう。

日々の管理

衛生管理は一時的な取り組みではなく、継続的に行う必要があります。 日々の管理を怠ると、計画が形骸化し、効果が薄れてしまうリスクがあります。

確認記録

実施内容は、記録に残しておきましょう。

記録の重要性

HACCPの要件では、計画が適切に実施されていることを証明するために、確認記録を残すことが求められます。
この記録は、行政指導やトラブル時の証拠としても活用できます。

記録の内容

・温度管理（冷蔵庫・冷凍庫の温度チェック）
・調理工程での重要管理点の監視記録
・清掃や衛生状態の確認

記録の作成は、紙ベースだけでなく、デジタルツールを活用することで効率化を図れます。
たとえば、温度管理を自動記録する機器を導入することで、手間を大幅に削減できます。

まとめ

HACCPの完全義務化により、飲食店が衛生管理を徹底する必要性はこれまで以上に高まっています。
HACCPは、飲食店の法律遵守だけでなく、業務効率化や顧客満足度向上にもつながる取り組みです。
本記事を参考に、店舗運営の改善や成長につながるHACCP対応を進めていきましょう。

なお、静岡産業社では、HACCP導入サポートを提供しております。
HACCP普及指導員、HACCP管理者（日本食品保蔵科学会認定）をお客様の工場へ派遣し、各種ご相談に対応します。

最新記事一覧