スーパーや直売所に並ぶ色とりどりの野菜たち。私たちが何気なく手に取っているその野菜、実は一つひとつが丁寧に「服」を着せられていることにお気づきでしょうか?
透明な袋、パリッとしたフィルム、あるいは通気性の良いネット。これら「農産資材(包装資材)」は、単なるゴミになる容器ではありません。畑で育った野菜の命を守り、お客様の食卓までその美味しさを届けるための、いわば「野菜のライフサポートシステム」なのです。
今回は、農業や資材について詳しくない方でも分かるように、野菜の包装が持つ深い意味と、その種類の違い、そして選び方のポイントについて解説します。
「採れたてをそのまま置いた方が、新鮮そうで良いのではないか?」 そう思う方もいるかもしれません。しかし、現代の流通において「裸の状態」で野菜を置くことは、実は野菜にとっても、買う人にとってもリスクが高いのです。
包装(パッケージ)には、大きく分けて3つの重要な役割があります。
これが最も重要な役割です。野菜は収穫された後も生きており、呼吸をしています。 裸のまま置いておくと、野菜は自分の水分をどんどん空気中に放出してしまい、あっという間にしなびてしまいます。また、呼吸によってエネルギーを使いすぎると、味や栄養価も落ちてしまいます。
適切な包装は、乾燥を防ぐ「保湿」の役割と、過剰な呼吸を抑える「冬眠」のような効果、そしてお客様が触れたり輸送中にぶつかったりする物理的な衝撃から守る「鎧」の役割を果たします。包装は、野菜の寿命(シェルフライフ)を伸ばすための必須アイテムなのです。
野菜は形も大きさもバラバラです。泥がついていることもあります。これをそのままトラックに積もうとすると、隙間だらけになって効率が悪いですし、土で他の荷物が汚れてしまうこともあります。
袋や箱に入れることで、形がある程度均一になり、積み重ねたり(スタッキング)、並べたりすることが容易になります。運ぶ人にとっても、お店で棚に並べる人にとっても、扱いやすくなるというのは非常に重要なポイントです。
スーパーには無数の野菜が並んでいます。その中で、お客様に「おっ、これは美味しそう」「安全そうだ」と思ってもらうためには、見た目の第一印象が勝負です。 「朝採れ」「農薬不使用」「〇〇さんが作りました」といった情報をパッケージに記載したり、野菜の色が映えるデザインの袋を使ったりすることで、その野菜の価値を無言のうちに伝えることができます。包装は「優秀な営業マン」でもあるのです。

人間がTPOに合わせて服を着替えるように、野菜もその性質に合わせて最適な資材を選ぶ必要があります。ここでは代表的な資材の種類を紹介します。
最も一般的なのが透明な袋です。しかし、実はただのビニール袋ではありません。用途に合わせて主に2つの素材が使い分けられています。
「防曇(ぼうどん)」という字の通り、曇りを防ぐ加工がされた袋です。 普通のポリ袋に水分を含んだ野菜を入れると、野菜の呼吸によって袋の内側に水滴がつき、白く曇って中身が見えなくなってしまいます。それだけでなく、その水滴が野菜に戻ると、そこから腐敗が始まってしまいます。 ボードン袋は、水滴を膜のように薄く広げる加工がされており、中身がクリアに見え、かつ水滴による腐敗も防ぎます。
ホウレンソウ、小松菜、キュウリ、トマトなど、多くの野菜に使われる万能選手です。
パリパリとした手触りで、非常に透明度が高い素材です。高級感があり、中身を美しく見せる効果があります。 ただし、素材自体に少し硬さがあるため、あまり詰め込みすぎると袋が裂けやすいという特徴もあります。
レタスやキャベツなど、丸い野菜を包むフィルムや、葉物野菜の見栄えを良くしたい時によく使われます。
ミニトマトやイチゴ、大葉、カットフルーツなどに使われる硬めの容器です。 これらは非常にデリケートで、少し押されただけで潰れてしまうものに使われます。外からの衝撃を吸収し、商品を潰れから守る役割(プロテクター)が強い資材です。
蓋がパチンと閉まる「嵌合(かんごう)タイプ」なら、テープで留める手間も省けます。
タマネギ、ジャガイモ、ミカン、ニンニクなどに使われます。 これらの野菜は特に「通気性」が重要です。湿気がこもるとすぐにカビが生えたり腐ったりしてしまうため、袋で密閉するのではなく、風通しの良いネットに入れます。
ネットの色(赤やオレンジなど)を中身に合わせることで、より色鮮やかに見せる視覚効果もあります。
ホウレンソウやネギ、アスパラガスなどを束ねる紫や青のテープです。 袋に入れない場合や、袋に入れる前の仮止めとして使われます。野菜がむき出しになるため乾燥には弱いですが、直売所などで「採れたての瑞々しさ」をダイレクトに伝えたい場合には効果的です。

「とりあえず袋に入れればいい」は大間違い。間違った包装は、かえって野菜を傷める原因になります。選ぶ際のチェックポイントを見てみましょう。
野菜には「蒸れやすいもの」と「乾燥に弱いもの」があります。
ブロッコリー、エダマメ、スイートコーンなどは呼吸が激しく、すぐに袋の中が酸欠になったり、熱を持ったりします。これらには、目に見えないミクロの穴が開いた特殊な袋(鮮度保持袋)や、有孔(穴あき)タイプのボードン袋を選びます。
葉物野菜(ホウレンソウ、春菊など)やキュウリ、ナスは、水分が命。穴の開いていないボードン袋に入れて、湿度を保つ必要があります。
服と同じで、サイズ選びは非常に重要です。
無理に押し込むと葉が折れたり、キズがついたりします。作業効率も最悪です。
中で野菜が動いてしまい、輸送中に擦れて傷つきます。また、スーパーの棚で場所を取りすぎて嫌がられたり、中身が少なく見えて「貧相」な印象を与えたりします。 野菜のサイズに合わせ、適度なフィット感のあるものを選びましょう。
「売れる」ためにはデザインも大切です。
黒い背景の袋やトレーを使うと、野菜の緑や赤が引き立ち、高級感が出ます。
底にマチがある「スタンドパック」は、売り場で自立するため非常に目立ちます。トマトやパプリカなど、色のきれいな野菜におすすめです。
ただし、デザインに凝りすぎて中身が見えなくなっては本末転倒。「中身がよく見えること」を最優先に、生産者の顔写真やこだわりポイントをワンポイントで入れるのがコツです。
最近のトレンドとして外せないのが「エコ」です。 プラスチックごみの削減は世界的な課題。消費者の意識も変わってきています。
植物由来の原料を配合した袋。
ジャガイモやタマネギなどの包装を、プラスチックから紙製の袋に変える動きもあります。「環境に優しい資材を使っています」というだけで、ブランドイメージが向上し、他の農家との差別化につながります。

野菜の収穫時期は「戦場」です。大量の野菜が一度に採れるため、手作業ですべて袋詰めしていたら、出荷が間に合いません。そこで活躍するのが包装機械です。
収穫してから袋に入れるまでの時間が短ければ短いほど、野菜の鮮度は保たれます。
農業の現場は常に人手が足りません。機械化することで、少ない人数でも大量の出荷が可能になります。
手作業だと人によってテープの留め方や袋の閉じ方にバラつきが出ますが、機械なら常に一定の品質で美しく仕上がります。
規模に合わせて、様々な機械が存在します。
手動タイプ(小規模・直売所向け) 電源不要で、レバーを下ろすだけでテープ留めができる機械や、袋の口をカチッと挟むクリッパーなど。数千円〜数万円で導入でき、手で結ぶより格段に速くなります。「コニクリッパ」などの製品が有名です。
電動タイプ(中規模向け) 袋を差し込むだけで、自動でテープを巻いてくれたり、カットしてくれたりする機械。エアの力で袋の口を絞るものなどがあります。作業者の疲労が劇的に減ります。
全自動タイプ(大規模・選果場向け) 野菜をコンベアに乗せるだけで、袋詰めから口留め、ラベル貼りまで自動で行うロボットのような機械。大規模な農家やJAの選果場で活躍します。
機械の導入はコストがかかりますが、「時間を買う」と考えれば、長い目で見ると利益につながる投資と言えます。
野菜の包装資材選びで最も大切なのは、それぞれの野菜の性質に合わせた「相性」の見極めです。呼吸量や水分量は野菜によって異なるため、適切な資材で鮮度を守る必要があります。
代表的な資材として、水滴による腐敗を防ぐ「ボードン袋」は葉物や果菜類に、透明度が高く見栄えが良い「OPP」はレタスなどに、通気性が命の根菜類には「ネット」が適しています。選定時はこれら機能面に加え、野菜にフィットするサイズ感、購買意欲をそそるデザイン、さらにはバイオマスなどのエコ素材かどうかも重要なポイントです。
また、出荷量の増加に伴い「包装機械」の活用も欠かせません。規模に応じて手動から全自動まで導入することで、作業時間を大幅に短縮し、結果としてより新鮮な状態で出荷が可能になります。適切な包装資材と機械の選定は、大切に育てた野菜の価値を最大限に引き出し、お客様へ美味しく届けるための鍵となります。
(補足)主な用語のおさらい
防曇(ぼうどん): 曇りを防ぐこと。ボードン袋のこと。
OPP(オーピーピー): 透明度が高く、パリッとしたフィルム素材。
嵌合(かんごう): パックの蓋と本体がパチンとハマること。
バイオマスプラスチック: 植物などの再生可能な有機資源由来のプラスチック。
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