日本食や日本文化への関心の高まりを背景に、海外出店を検討する飲食店が増えています。寿司やラーメン、和菓子だけでなく、居酒屋やカフェといった日本独自の飲食スタイルも、海外で注目を集めています。
一方、海外出店では、現地の食文化や消費者ニーズ、法規制、雇用制度、不動産契約など、日本国内の出店とは異なる準備が必要です。国内で成功している業態であっても、そのまま展開するのではなく、進出先に合わせた事業計画や運営体制を整えなければなりません。
本記事では、飲食店が海外出店を検討してから、現地で開業・運営するまでの8ステップを解説します。市場調査、資金調達、物件選び、現地採用、開業手続きなど、海外進出で押さえるべきポイントを確認しましょう。
1. 現地市場・競合・法規制を調査する
2. 出店コンセプトと事業計画をつくる
3. 必要資金を調達する
4. 立地・契約条件を確認して物件を選ぶ
5. 店舗設計、メニュー開発、採用を進める
6. 法人設立・営業許可などの開業手続きを行う
7. 現地に合わせた販促活動を行う
8. 開業後も数値を確認し、運営を改善する
飲食店が海外で継続的に事業を運営するためには、現地市場の理解、資金計画、法規制への対応、人材確保などを段階的に進めることが重要です。
特に海外では、外資規制、食品衛生基準、営業許可、雇用制度、税制などが国や地域によって異なります。出店を決定する前に、現地の制度や商習慣を十分に確認する必要があります。
ここからは、海外出店に向けた準備から開業後の運営までを、8つのステップに分けて解説します。

海外出店の第一歩は、進出候補となる国・地域の市場調査です。現地で求められる商品やサービスを把握し、自店の業態が受け入れられる可能性を見極めます。
市場調査では、売上が見込めるかどうかだけでなく、現地で適法かつ継続的に営業できる環境が整っているかも確認することが重要です。
主な調査項目は以下のとおりです。
- 外食市場の規模や業界動向
- 現地のトレンド、流行、消費者ニーズ
- ターゲット層の年齢、所得水準、価格感覚
- 食文化、宗教、生活習慣、食材に関する制約
- 競合店の業態、価格帯、立地、口コミ
- 外資規制、営業許可、衛生基準、税制
- 労働環境、人材採用の難易度、賃金水準
- 治安、インフラ、物流、食材調達の状況
複数の候補国がある場合は、できるだけ同じ時期・同じ評価基準で比較することが大切です。市場規模だけで判断せず、自社の強み、現地での競争優位性、開業後の収益性まで踏まえて検討しましょう。
情報収集には、現地視察のほか、統計資料、業界レポート、現地メディア、SNS、専門家、現地パートナーなどを活用します。特に外資規制や営業許可などの制度は変更される場合があるため、最新情報を確認する必要があります。
進出先の候補が固まったら、海外出店に向けた事業計画を作成します。事業計画は、出店の方向性を社内で共有するためだけでなく、融資や出資を受ける際の重要な資料にもなります。
まずは、「どこで、何を、誰に、どのように提供するのか」を明確にします。進出目的、業態、ターゲット、価格帯、立地、提供価値などを整理することで、店舗のコンセプトに一貫性が生まれます。
日本の店舗をそのまま再現するのではなく、現地の嗜好や購買力、食文化に合わせて、メニューやサービスを調整する視点が必要です。
事業計画の中核となるのが資金計画です。海外出店では、初期費用だけでなく、開業後の運転資金、物流費、為替変動なども想定して計画を立てます。
主に以下の項目を整理しましょう。
投資計画:物件取得費、内装工事費、厨房機器、什器備品、開業準備費
- **売上計画**:客数、客単価、回転率、営業時間、月次・年次売上
- **損益計画**:原価、人件費、賃料、水道光熱費、物流費、広告宣伝費、税金
- **返済計画**:借入金の返済額、返済期間、キャッシュフローへの影響
開業資金に加え、想定より売上が立ち上がらない場合に備えた運転資金・予備資金も確保しておくことが重要です。
海外出店では、現地パートナーの有無や出資比率、法人形態によって、資金計画や意思決定の仕組みが変わります。
現地法人を設立するのか、日本法人の子会社として展開するのか、現地企業との合弁会社を設立するのかなど、自社に適した出店スキームを検討しましょう。国によっては外資規制や出資比率の条件が設けられている場合もあるため、現地の専門家に確認しながら進めることが大切です。
予算は、将来の経営目標を数値で示したものです。売上や利益、投資回収、資金繰りを可視化することで、出店計画の実現可能性を判断しやすくなります。
開業後も予算と実績を比較し、客数・客単価・原価・人件費などの差異を確認することで、改善すべき課題を把握できます。

事業計画をもとに、海外出店に必要な資金を調達します。飲食店の海外開業では、物件取得、内装工事、厨房設備、人材採用、食材・資材の調達、販促など、多額の初期投資が必要になる場合があります。
資金調達においては、自己資金の有無だけでなく、事業計画の実現性、既存事業の実績、返済原資、担保・保証などを総合的に確認されます。
自己資金を準備することは、事業への投資余力や資金計画の安定性を示す要素の一つです。必要資金の全額を借入に依存しないよう、出店規模に応じた資金構成を検討しましょう。
海外出店では、事業規模や進出先、成長戦略に応じて、複数の資金調達方法を組み合わせることがあります。
- 自己資金
- 親族・知人からの借入
- 金融機関からの融資
- 投資家・ベンチャーキャピタルからの出資
- 現地企業とのジョイントベンチャー
- 補助金・助成金の活用
それぞれ返済義務、出資比率、意思決定への影響、調達までの期間が異なるため、自社の事業方針に合った方法を選択することが重要です。
中小企業やスタートアップにとって、補助金・助成金は資金負担を抑える選択肢の一つです。海外展開を対象とした融資制度や支援施策は、国の機関、支援団体、地方自治体などが設けている場合があります。
ただし、対象となる事業、申請時期、必要書類、補助対象経費は制度ごとに異なり、内容が変更されることもあります。利用を検討する際は、必ず最新の募集要項や公的機関の情報を確認しましょう。
海外進出に関する資金調達や支援制度は複雑なため、海外ビジネスに詳しい専門家・コンサルタントと連携することも有効です。
事業計画、資金繰り、出店スキーム、現地パートナーとの契約条件を総合的に検討し、自社に適した調達方法を設計しましょう。

資金調達の見通しが立ったら、現地での店舗物件を選定します。飲食店にとって立地は売上を左右する重要な要素であり、海外では不動産契約や物件管理の慣行が日本と異なる場合もあります。
物件を選ぶ際は、以下の条件を確認します。
- 賃料と共益費
- 人通り、商圏、近隣施設
- 公共交通機関からのアクセス
- 店舗面積、席数、厨房スペース
- 視認性、建物の階数、看板の設置条件
- 周辺競合の状況
- 配達・テイクアウト需要との相性
すべての条件を満たす物件を見つけることは容易ではありません。事業計画と店舗コンセプトを基準に、「譲れない条件」と「調整できる条件」をあらかじめ整理しておくことが大切です。
海外の物件選びでは、賃料や人通りだけでなく、治安、地域住民の宗教・習慣、営業時間の制約、周辺の商業エリアの特性なども確認します。
例えば、地域によってはアルコール提供や営業時間に制限がある場合があります。自店の業態やメニューが地域特性と合っているかを、現地視察や信頼できるパートナーからの情報をもとに判断しましょう。
物件契約には、契約期間、更新条件、賃料改定、原状回復、工事範囲、解約条件など、事業継続に影響する項目が含まれます。
契約書へ署名する前に、現地の不動産契約や商法に詳しい弁護士などに内容を確認してもらいましょう。契約条件を十分に理解しないまま進めると、開業後の予期せぬ費用やトラブルにつながるおそれがあります。

物件が決まったら、店舗づくり、人材確保、メニュー開発を進めます。店舗の世界観とオペレーションを両立させながら、現地で安定的に営業できる体制を整えることが重要です。
店舗デザインでは、ブランドイメージだけでなく、接客動線、厨房動線、衛生管理、食材保管、清掃のしやすさなどを考慮します。
- 内装・外装デザイン
- 厨房機器の選定とレイアウト
- 家具、什器、食器、備品の調達
- 現地施工会社との工程管理
- 消防・衛生・建築基準への対応
海外では、施工品質や工期、調達方法が日本と異なる場合があります。図面・仕様・納期・費用負担を明確にしたうえで、施工会社と密に連携しましょう。
海外出店では、日本の味やブランドらしさを守りながらも、現地の嗜好、食材調達、宗教・文化、価格感覚に合わせる必要があります。
現地の食材を活用したメニュー開発、提供量の調整、辛さや甘さの調整、ベジタリアン・ハラールなどへの対応を検討しましょう。
価格設定では、原価率だけでなく、人件費、賃料、物流費、税金、競合店の価格帯、顧客の購買力を踏まえて判断します。
店舗運営の品質は、スタッフの接客力、調理技術、チームワークに大きく左右されます。開業前に必要な職種と人数を整理し、採用・教育計画を作成しましょう。
- 必要なポジションと人員数の整理
- 求める経験・スキル・語学力の明確化
- 現地採用と日本からの派遣の検討
- 現地の求人手法、人材紹介会社の活用
- 接客、衛生、調理、オペレーションに関する研修
現地スタッフには、日本式の品質管理や接客の考え方を伝えつつ、現地の文化・働き方・価値観も尊重することが大切です。

海外で飲食店を開業するには、法人設立、営業許可、税務登録、衛生・消防関連の手続きなどが必要です。必要な許認可や条件は国・地域・業態によって異なるため、早い段階から確認を進めましょう。
国によっては、飲食業が外国企業の参入制限業種となっている場合や、現地法人の設立、現地パートナーとの共同出資、特定の資格・責任者の配置が求められる場合があります。
出店を決定する前に、以下のような事項を確認します。
- 外資規制・出資比率の条件
- 法人設立に必要な手続き
- 飲食営業許可、酒類提供に関する許可
- 食品衛生、消防、建築に関する基準
- 税務登録、雇用・社会保険関連の届出
- 駐在員のビザ・就労許可
開業手続きでは、申請漏れや契約上の見落としが、開業延期や営業停止につながる可能性があります。
会社設立、営業許可、税務、労務、不動産契約、施工契約、仕入先との契約などについて、現地の法令や商慣習に沿っているかを確認しましょう。
海外での開業手続きは、自社だけで完結することが難しいケースもあります。現地の弁護士、会計士、税務専門家、設立支援会社、許認可に詳しいコンサルタントなどと連携し、必要な手続きを確実に進めることが重要です。

店舗の準備と並行して、開業前から現地に向けた販促活動を行います。海外では、消費者の情報収集方法や予約・来店行動、影響力のあるメディアが日本と異なるため、現地に合った施策を選ぶ必要があります。
主な施策には、以下があります。
- 現地で利用されているSNS・口コミサイトへの情報掲載
- インフルエンサーやローカルメディアとの連携
- オープン前イベント、試食会、プレオープン
- 地域イベントへの参加
- 周辺住民・近隣企業に向けた告知
- テイクアウト・デリバリーサービスへの登録
販促施策は、単に認知を広げるだけでなく、自店のコンセプトや商品の魅力を現地の人に伝えることが重要です。誰に、どのような価値を提供する店なのかを明確に打ち出しましょう。

海外出店は、店舗をオープンした時点がゴールではありません。現地で事業を継続・拡大するためには、開業後の数値確認、人材育成、商品・サービスの改善を続ける必要があります。
開業後は、売上だけでなく、以下のような指標を定期的に確認します。
- 客数
- 客単価
- 回転率
- 原価率
- 人件費率
- 賃料比率
- 広告宣伝費
- 口コミ評価
- リピート率
- 食材ロス
- スタッフの定着率
計画と実績の差異を把握し、メニュー、価格、営業時間、接客、販促、仕入れ方法などを見直しましょう。
開業後も、スタッフ教育は継続して行う必要があります。接客品質、衛生管理、調理手順、クレーム対応、マネジメントなどを標準化し、店舗全体で共有することが重要です。
日本式のサービスや品質管理を一方的に押し付けるのではなく、現地スタッフの意見や文化的背景を取り入れながら、店舗に合った運営体制を構築しましょう。
1店舗目の運営が安定した後は、同一エリアでの多店舗展開、別都市・近隣国への出店、フランチャイズ展開などを検討することもできます。
ただし、出店数を増やす前に、収益性、人材確保、食材・資材の調達体制、店舗オペレーションの再現性を確認することが大切です。
飲食店が海外出店を成功させるには、現地市場に合わせた事業計画をつくり、法規制・資金・物件・人材・物流などを総合的に準備する必要があります。
海外出店の主な流れは、以下の8ステップです。
1. 事前リサーチ
2. 事業計画の立案
3. 資金調達
4. 店舗物件の選定
5. 店舗デザイン・メニュー開発・人材募集
6. 開業手続き
7. 開業に向けた販促活動
8. 開業後の運営と改善
海外市場は大きな成長機会がある一方で、国や地域ごとの制度・商習慣・消費者ニーズへの対応が欠かせません。市場調査と事業計画を丁寧に行い、必要に応じて現地の専門家やパートナーと連携しながら、計画的に海外出店を進めましょう。
静岡産業社では、お客様の海外展開を支援する海外事業部を設け、海外での飲食店出店に関する調達・物流・店舗運営面の支援を行っています。
現地での市場リサーチをはじめ、日本および海外からの食材・資材調達、店舗備品の手配、出店後の店舗メンテナンスまで、お客様の状況や進出先に応じたサポートをご提供します。
飲食店の海外出店、食材・資材の調達、物流体制の構築、海外店舗の運営についてお悩みの際は、ぜひご相談ください。